日本の製造業で「現場力」が失われている

最近、日本の製造業の工場などで「現場が崩壊寸前だ」という声を聞くようになった。コスト削減優先の中で、数年しか働けない技能実習生に現場を任せるところが増えてきた。現場にベテラン作業員がいても高齢化でいつまで勤められるか分からない、と言う。どんどんマニュアル化、機械化して、熟練のベテランは姿を消しつつある。

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つまり、現場で責任感をもって仕事をこなす人の力が落ちているというのだ。

現場のいわば“プロ”が減って、「リスク(危険)」を捉える力も落ちている。リスクというのは予想外の事から起きる。すべてマニュアルに書いてあるわけではない。かつては、現場で経験を積んでいる中で、様々なリスクに直面し、自ら解決策や善処方法を会得したものだが、最近は「想定外」に直面した結果、対応が後手に回るケースが少なくない。こういうことが起きれば、こんな事態が生じるかもしれない、という現場ならではの「想像力」が欠落するようになっているのだ。

このままでは不幸な事故は繰り返される

通園バスを日々運転していれば、降りる際に子供がいたずらで椅子の下に隠れているようなことに遭遇するだろう。万が一、椅子の下にいて炎天下で放置されればどうなるか、車内の温度は何度ぐらいになるかリスクに対する「想像力」が働けば、自ら「指差喚呼」して子供が残っていないことを確認するに違いない。漫然と仕事をこなしているから事故は起きる。

残念ながら、今の学校教育では、そうした「想像力」を養うような授業が行われていないのだろう。マニュアル的な知識習得が優先され、A=Bといった答えだけを求める教育が行われている。どんな事にも「リスク」があり、一方で「ベネフィット(利益)」を得ようとすればリスクをゼロにすることはできない。

つまり、ベネフィットを得るためにどうやってリスクを最小化するかという、まさに「現場」で経験的に積み上げられてきた知恵が失われていっているのではないか。

相次いだ通園バス置き去り問題は、日本の「現場力」の弱体化を示しているように見える。だとすると、マニュアル化や機械化をいくら進めても、不幸な事故は形を変えて起き続けるに違いない。

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