都市部で大災害が起きたらどうなるか。東日本大震災で被災した作家のたくきよしみつさんは「危険度が最も高いのは高層マンションだ。エレベーターやトイレが使えなくなり、一瞬で厳しいサバイバル現場になる。なぜあんな怖ろしいところに大金を投じて住みたいのか、わからない」という――。(第1回)

※本稿は、たくきよしみつ『マイルド・サバイバー』(MdN新書)の一部を再編集したものです。

東京の高層ビル
写真=iStock.com/Juergen Sack
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命以上に優先順位の高い課題はない

巷には、資産運用、ダイエット、アンチエイジング、恋愛、ビジネス戦略、メタバース……といった様々な話題が溢れていますが、それらはすべてあなたや私といった「個人」が生きていてこそ意味を持つものです。昔から「命あっての物種」といいますが、まさにその通りで、これ以上の優先順位を持つ課題はありません。

……などというと、「そんなことは分かりきっている」と反発されそうですが、そう言わず、ちょっと考えてみてください。本当に命を守ることを真剣に考えているでしょうか。

まず、食料を買えなくなったらどうしますか?

食糧危機が来ると言われても、「物価は上がるだろうけれど、店から食料品が消えるなんてことは起こるはずがない」と思っている人が多いのではないかと思います。しかし、消えるときは消えるのです。店ごと消えることもあります。

3.11のときを思い出してください。あっという間にスーパーからは米や缶詰が消え、ガソリンスタンドからガソリンが消えました。

あのときは一時的に物流が混乱しただけで、供給元からモノがなくなったわけではなかったのですぐに元に戻りましたが、今私たちが直面している食料危機は、供給元から根こそぎモノがなくなるという危機です。

食料危機、富士山噴火が起きたらどう命を守るか

穀物はすぐに作れるわけではありませんから、倉庫の備蓄分が底をつけばどうしようもありません。石油も、外から入ってこなくなればどうにもなりません。大量死に直結します。

首都直下型地震や富士山の噴火などが起きたら、それこそ東京が丸ごと機能停止に陥ります。どちらも絵空事ではなく、歴史上実際に起きてきたことです。

食料危機、エネルギー危機のような危険と地震や津波のような自然災害による危険。そのどちらにおいても、都市での生活は危険度が高いことははっきりしています。不幸にして都市にいるときにそうした危険が襲ってきたときは、まず自分の命を守らなければなりません。

地震に備えて家具に転倒防止金具をつけましょうとか、避難持ち出し袋を買っておきましょう、などという生ぬるいレベルでは、本当の危機に直面したときに命は守れません。一瞬にして町全体、地域全体が機能不全に陥るような状況を明確に思い描き、対処方法を考える必要があります。