巨大防潮堤より必要なのは1人用救命ボート

3.11で大津波に呑み込まれた東北の太平洋岸地域では、被災後に巨大な防潮堤を築く工事を始めました。

しかし、これは危険回避の方法としては馬鹿げています。地元民からも「海面の変化が見えなくなることでかえって危険だ」「そこにつぎ込む金と資材と人力で、まずは被災者のための住宅を造れ」と反対の声が上がりました。

津波を巨大防潮堤で防ごうなどという発想は根本的に間違っています。

私が思う最も合理的な対策は、海沿いの家や施設に、カプセル型の1人用救命ボートを配備することです。普段は小さくたたんでおけて、緊急時にはエアですぐに膨らんでカプセル状になり、中に入れば津波に呑み込まれても数日は沈まずに生きながらえるような装置。その程度のものを作ることは難しくないと思いますが、実現していません。

津波に呑み込まれず、とりあえず危険から脱出するための最も効率的な道具という発想を、都市を襲う直下型地震災害にあてはめてみます。

東京で全インフラが止まったら何が起きるか

例えば首都直下型地震が起きて東京が一瞬にして機能不全に陥ったとしましょう。

建物が崩落したり大火災が起きたりしなくても、電気やガスが止まり、寸断された道にクルマが溢れ、鉄道も動かなくなるという状況だけでも、都会は即座にリアルサバイバルの場と化します。

短期でのインフラ復旧が見込めないとなれば、家にいても命の危険があります。水が出なければシャワーが浴びられないどころか、トイレに入っても糞尿を流せません。電気が来なければマンションのエレベーターは動きません。店からはすぐにものが消え、食べ物も手に入らなくなります。冷暖房が使えないので、真冬なら低体温症に、真夏なら熱中症になってしまうかもしれません。

治安も悪化します。いくら従順で秩序を守る日本人とはいえ、犯罪や暴動の危険が増えます。

1日、2日はなんとか持ちこたえても、それ以上家にとどまるのは座して死を待つようなものでしょう。