3.11のような悲劇が都会で起きてもおかしくない
私は2011年の東日本大震災と福島第一原発爆発でそれを実際に経験しました。
千代田区の17倍の面積を持つ福島県川内村は村長が全村避難指示を出し、隣の富岡町から身一つで避難してきた人たちも含めて村民全員が一斉に村を出ました。帰村宣言したのは1年以上経ってからです。
川内村は奇跡的に周囲の町村に比べて放射能汚染が低く、地震そのものの被害(倒壊や火災)もほとんどなかったため、村の公共共同浴場施設がそのまま双葉郡唯一の広域消防拠点になっていました。要するに、周辺地域に比べてものすごく運がよかったのです。
全村避難から11年以上経ち、村は平穏を取り戻していますが、今でも食品の放射線検査は続けているそうです。
こうした災害や人災事故は日本国中どこで起きてもおかしくありません。首都圏や大都市では起きないという理由は何もありません。
都会でこの規模の災害が起きたときにはどうなるか、想像してみてください。
原発爆発が東京湾岸の発電所で起きていたら…
福島県とその近郊で放射能被害を経験した人たち以外は、原発爆発は福島という遠い土地で起きた悲劇だと思っているでしょう。大変なことが起きたことは知っているけれど、離れた場所で暮らしている自分には、沖縄の基地問題と同じで、あまり関係がない、と。
そこで、あの爆発がもし東京湾岸で起きていたらどうなっていたかを説明したいと思います(私はあれを「事故」と呼ぶことに抵抗があるので、「愚かすぎる管理・行動の結果、大量の放射性物質をばらまいてしまったあの事件の総体」を「フクシマ」とカタカナで表記することにしています。これは歴史上の「ヒロシマ・ナガサキ」同様で、福島という土地を表しているのではありません)。
東京電力は、東京湾の千葉県側に五つ、神奈川県側に五つの火力発電所。それに挟まれるように、東京湾中心部に大井と品川という二つの火力発電所を持っています。
これだけ多くの火力発電所を東京湾岸に有しているのですから、原子力発電所だって一つくらいあってもおかしくないように思えますが、東電の原発は、福島県と新潟県という、非常に離れた、東北電力の管轄地に造っています。放射能漏れ事故を起こした場合、首都圏では取り返しがつかないことになるので、念のため遠方の過疎地に建設したわけです。
「フクシマ」が実際に起きてしまって、その計算は見事にあたってしまいました。