パソナグループは淡路島への本社移転を発表したが…

2020年秋に、本社機能の一部を東京都から兵庫県の淡路島に移すことを発表した、人材派遣会社大手のパソナグループのように、そのような可能性が全くないとは言えませんが、そのような行動に多くの企業が追随するとは考えにくいのです。

山本和博『大都市はどうやってできるのか』(ちくまプリマー新書)

企業の本社機能とは、企業の経営管理を統括する機能であり、そこで行われている活動は非常に知的な生産活動です。前節で述べたように、このような活動は人と人の間での顔を合わせたコミュニケーションによるアイデアと知識の共有が重要であり、大都市に集積するメリットが非常に大きいのです。

大都市にはさまざまな企業が本社機能を置いているため、そこには多くの専門知識を持った労働者が集まっています。本社の経営管理部門で働く労働者にとっては、アイデアや知識を持った労働者がたくさん住んでいて、そのような人たちと直接顔を合わせることで得られる暗黙知を含めた情報に触れられることが重要なのです。したがって、本社機能の労働生産性を向上させるためには、大都市に立地することが不可欠になります。

ICTが発達したからこそ、東京への人口流入が進んでいる可能性が高い

以上の思考実験は、ICTの発達による地域間の情報通信費用の低下は、東京の本社機能の拡大を進め、地方都市の支社の権限と規模を縮小してしまうことを示しています。1950年代以降の日本では、地方から東京に一貫して人口が流入しています。1950年代から60年代にかけて、電話が急速に普及したので地域間の情報通信費用は大幅に低下しました。この過程では三大都市圏への人口の流入が起こりました。

2000年代以降のインターネットや電子メール、携帯電話やスマートフォンの普及も地域間の情報通信費用を大幅に低下させましたが、地方から東京への人口の流入は継続しています。ICTの発達は、東京の本社機能の拡大をもたらし、地方から東京への人口の流入を後押ししている可能性の方が高いのです。

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