黒田総裁の任期満了後が注目される
その他のきっかけによって円キャリートレードの巻き戻しが進む展開も予想される。一つのシナリオとして、米株の急落リスクがある。FRBは大幅な利上げを続け、それと同時に量的引き締め=QTも本格化する。米国の金利は上昇するだろう。無リスク資産である国債流通利回りの上昇によって、リスク資産である株式を保有する魅力は低下する。
それに加えて、依然として米国の株価の水準は高い。金融引き締めの強化によって短期ゾーンを中心に金利が上昇すれば、米国の労働市場は悪化し、個人消費の減少懸念が高まる。リスク回避に動く投資家は増え、株を手放す投資家が増える。売りが売りを呼んで米株が急落する展開は排除できない。それによってリスクオフの流れが鮮明となれば、円売りポジションを手仕舞う投機筋は増えるだろう。
また、日銀の総裁人事などによって異次元金融緩和の修正が目指される展開も予想される。2023年4月8日に、異次元金融緩和の強化と継続にコミットした日銀の黒田総裁は任期満了を迎える。新しい総裁の下で、日銀は金融政策の正常化に慎重に取り組む可能性が高い。その展開が現実のものとなれば、日米の金利差はこれまでのようには拡大しづらくなるはずだ。その結果として、円売り圧力は徐々に弱まるだろう。