年長者の話を聞くのは権力に屈しているから

第二に「権力への甘え」があるからです。

中原淳『話し合いの作法』(PHPビジネス新書)

年齢があがり、ある程度の権力を持つようになると、立場上、人前で話す機会はどんどん増えます。自分以外のメンバーは、その人の持っている「権力」に屈服して、やむなく、話を聞いているだけなのですが、ここで「派手な誤解」が生じます。

「自分の話は誰もが聞きたいに違いない」と誤解し、「みんな、ありがたく聞いてくれる」と思って、ダラダラとしゃべり続けてしまうのです。

要するに年齢にともなって強くなる「権力」に甘え、「少しくらい話が長くなっても許されるだろう、みんな聞いてくれるだろう」と思うようになってくるのです。

かくいう私も今年47歳になります。20年前の若造のときよりは、登壇機会も増えましたし、皆さんの前で挨拶する機会も増えました。権力に甘えてしまってはいけない。自戒をこめて、そう思っています。

年を取るとフィードバックが受けにくくなる

第三に、これは第二の理由と関係しますが、権力を持つと、第三者からのフィードバックを受けにくくなるからです。若い頃なら、話が長くなったり、その要点が不明瞭になったりしたときには、上位者や先輩が助言やフィードバックをくれました。「もう少しポイントをしぼって話そう」と言ってくれる「誰か」がいたのです。

しかし、年齢があがると、それがなくなります。どんなに話がつまらなくても、どんなに話の要点が不明瞭で、長くても、誰ひとりとして本人にネガティブフィードバックをくれる人はいません。そういう経験を3年も繰り返していれば、いつしか「裸の王様」になってしまうのです。

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