現代は承認欲求に振り回されている

たしかに、いまの時代は「自分にこだわらなければ生きていくのが難しい時代」になっている面があるのかもしれません。

わたしたちはつねにまわりから評価されるし、自分の強みをアピールし続けなければならなくなっていて、我執を駆り立てる世の中になっているともいえます。

そうして、なんでもかんでも「評価される」時代では、仕事に限らず、本来コミュニケーションの楽しみのためのSNSでも、とにかく「いいね!」がほしくなってしまう。

承認欲求を満たしてくれるものに、つい夢中になってしまうわけですね。

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そこで自分をかりそめにでも認めてもらえれば、気持ちが落ち着いて、不安や悩みを少しだけ忘れることができる。そうして、繰り返し同じような承認を求めてしまうのです。

いまの世の中にはそんな仕掛けが多過ぎると感じませんか? モノであれ情報であれ、他者からの承認であれ、自分の外側にあるものがあまりに多く、選択肢が増え過ぎていて、わたしたちは駆り立てられるようになにかを得ようと必死になっています。

でも、そのなにかを手に入れた結果、なぜか自分の心が満たされていないことに気がついてしまう。だからこそ、その心の空洞を埋めるように、またなにかを求めてしまうのでしょう。

つまり、先の「お金が足りない」という悩みに戻ると、「お金が足りない」というのは、悩みの本質ではないということです。

例えば、いま手元にお金がなくても、自分の生き方やあり方を見て、自然と応援してくれる人が現れることだってあります。

もちろん、他人がかかわることはタイミングの問題もありますが、自分の心の蓋を取り払っていれば、その人間の生きざまや価値観などは、表情や振る舞いから伝わるものです。

もっと直截ちょくせつにいえば、「○○のためにいまどうしてもお金が必要なんです。○○までに必ず返しますから、貸していただけないでしょうか?」と、誰かにお願いすればいいでしょう。

それができないのは、やはり自分にこだわっているからです。

自分を飾ることなく、ありのままの姿を見せよ

人に借りをつくることの是非はともかくとして、我執をゆるめれば、お金などの問題は案外すぐに解決する可能性があります。お金もまた、自分の外側にあるものに過ぎないからです。

たとえお金を借りられなくても、あなたが自分を飾ることなく、ありのままの姿を見せていれば、親身になって相談に乗ってくれたり、新しい人や仕事を紹介してくれたりするかもしれません。

そこから、新しい出会いや機会が生まれて、ゆくゆくの収入につながっていくかもしれません。

そのようにして、ものごとは「あなた自身から」動かしていくことが大切なのです。

そのためには、もっと我執をゆるめて、「こだわり」を手放すことです。これは自分の強みやいいところ、可能性などを捨てろという意味ではありませんよ。

それらに、もう「こだわるな」ということです。

自分にこだわらなければ、自分からものごとを動かすなんて余計に難しくなるような気がするかもしれません。

ですが、別に自分のこだわりがあるからといって、他者を自在に動かすこともできません。

いや、相手に「右を向いてください」といって右を向かせることすらできないかもしれません。相手はそれを聞いて、あえて左を向くかもしれませんよね?

そう、本質的に他者はコントロールできないものなのです。