まずは今のミニバンの主流とも言えるワイルドな「オラオラ顔」をノア、ヴォクシーで見事に作り分けてきたこと。

ここ10年はラージクラスで圧勝を続ける、トヨタ・アルファードをみるまでもなく今のミニバン商戦を制すカギは顔のインパクトであり、ワイルドさ。そこをしっかり強化してきました。

写真=筆者提供
オラオラ顔のヴォクシー

徐々に拡大する箱型ミニバンですが、サイズ感も適切です。全長は基本変わらぬまま全幅を3cmのみ拡大させて扱いやすさをキープしている点もいい。

さらに、トヨタ自慢のハイブリッドがさらに進化し、第5世代とも言われる1.8Lユニットを初搭載しています。この燃費スペックがまた凄く、国際的な燃費計測方法で実費に近い数値が出るWLTCモードで最良23.4km/Lを達成しているのです。

また、ミニバンならではの新アイデア機構、リアゲートを好きな位置で止められるフリーストップバックドアも凄い。

小沢は愕然としました。これは競合にはなかなか太刀打ちできないだろうと。

初期受注は1カ月で約3万5000台(約2カ月で約7万台)というのもうなずけます。

ホンダの「オレ流」が足かせになっているのか

2021年の年間販売数を見ると、ノア&ヴォクシー&エスクァイア3兄弟が合算12万6000台、日産セレナが5万8000台なのに対し、ステップワゴンは3万9000台。

ホンダはトヨタの半分にも満たない惨敗っぷりです。なぜこのような差がついてしまったのでしょうか。

小沢の勝手な仮説ではありますが、「こどもといっしょにどこいこう」のCMで一躍国民の足となった元祖箱型ミニバンである初代ステップワゴンが、ここまで落ちたのはホンダが独自の個性化戦略を外せなかったからです。

1996年に登場するなり、月販1万台レベルで爆発的に売れた同車ですが、1999年にライバルの日産セレナがFFボディ化し、2001年にトヨタがFFミニバンの初代ノア&ヴォクシーを発表すると徐々に客が奪われていきました。

正直、私の目にはディーラー数約5000店と販売力で勝るノア&ヴォクシーや、広さと質感で追い上げるセレナに対し、ホンダは独自路線に執拗しつようにこだわり続けているように映りました。

具体的には競合がいち早く採用した両側スライドドアに目を向けず、2代目でも片側スライドドアを採用。3、4代目モデルでは、他がやらない低床プラットフォームを採用し、背の高さを感じさせないシャープなハンドリングに必要以上にこだわったり……。5代目には、テールゲートに観音開きの個性たっぷりな「わくわくゲート」(第5のドアとして設置された横開き式の補助ドア)を採用。

ホンダ開発陣が、「ホンダらしさ」であり「オレ流」にこだわるのは昔から有名ですが、歴代ステップワゴンも「ホンダにしか作れないミニバン」にこだわり続けた結果、それがアダとは言わないまでも、決して売り上げに効果的とは言えない状態を生み出しているように見えました。

ゆえに、6代目発売の一報を聞いても、長らく評価低迷中のステップワゴンが挽回するとは思っていませんでした。