なぜか国際的に常識の反発係数を規定に入れない

全米の主要な大学が加盟するNCAA(全米大学体育協会)は、BBCORバットに関する厳密な規制を設けている。

2020年5月に改訂された10ページに及ぶ規定書によれば、NCAAの各大学で使われるBBCOR金属バットは、形状や材質などに加えて、所定の機関で、バットに一定条件でボールをぶつける適合性テストを受けて反発係数の数値をクリアしなければならない。形状や材質が適合していても反発係数が高ければ、NCAAでは使用できない。そもそもBBCORとは「打球反発係数」のことなのだから当然ではある。

筆者撮影
アメリカで使われているBBCOR規定の金属バット

今回の問題について、日本高野連に質問状を送付した。手元に届いた回答を要約すると以下のようになる。

1.日本側(製品安全協会、全日本野球バット工業会、日本高等学校野球連盟)はアメリカと共同歩調を取りたいと考えていたが2011年にNCAAが独自にBBCOR0.50仕様のバットを開発した。

2.日本側は2020年から木製バット、少なくともBBCOR0.50と同等もしくはそれ以上とする方針で検討を始めたが、米の基準を日本で満たすには、検査環境、使用球などを整備しなければならない。これは経費面で難しい。

3.そこでBBCOR0.50と同等の性能とするためにバットの最大径を67ミリから64ミリとするなど独自の規格を設定した。

とのことだった。

日米で金属バット見直しの議論が起こり、アメリカNCAAが新基準を導入したのが2011年、日本が対応するまで10年以上もかかったのが驚きではある。

また「反発係数」も明記されていない。今回の改定にあたって日本高野連は、新規格バットの反発係数を測定するために「万能試験機(オートグラフ)」を使用したという。本来なら、全製品についてこの機器で計測した反発係数を規定に加えるべきだろう。

そうなれば、メーカーがどんな「製品改良」をしても飛びすぎるバットにはならないはずだ。「反発係数」に関する規定はぜひ盛り込むべきではないか。

木製バットは1本数千円から1万円ほどだが、金属バットは耐用性があるとはいえ、2~3万円する。全国の高校野球部ですべてを入れ替えるとすると、莫大ばくだいな費用だ。

何度も入れ替えることは不可能なのだから、重量規定が数年で意味がなくなった前回のてつを踏むことなく、慎重に仕様を決めてほしい。