若い人にとっては厳しい働き方だが…

さらに問題なのは、年金保険の場合は国民年金に加入することになるから、高齢期の厚生年金保険の給付を受けることができないという点にある。厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると国民年金受給者の老齢年金の平均年金月額は2020年時点で5万6358円。この程度の金額では、老後に豊かな暮らしを送ることはできない。

現役時代をフリーランスで過ごすのであれば私的年金で多額の積み立てをする必要があるが、そういった事情を理解している人はそこまで多くないのではないか。

フリーランスという働き方は、若い人にとっては厳しい働き方になる。しかし、これもやはり高齢期の働き方となれば話は別である。定年後はそもそも年金を受け取れる年齢に差し掛かっていることから、年金を受け取りながらフリーランスとして少額の金銭を稼ぐという働き方は十分ありうる。

また、そもそも収入水準が低いことから国保保険料も大きな問題とはなりにくい。組織に縛られずに自由に働けるというメリットを感じながらフリーランスとして働くことは、定年後の現実的な選択肢となるだろう。

定年後にはさまざまな仕事の選択肢がある

フリーランスといっても、長年企業に勤めてきた人にとって、その実態をイメージすることは難しい。そこで、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」を用いて、60歳以上でかつ自営(雇人なし)で働いている人の職種を分析してみるとどうなるか。

フリーランスとして就業する人の働き方は、会社で正規雇用者として働く人と比べると実に多種多様である。少し粗い分類ではあるが、これをあえて類型化したものが図表2である。

出所=『ほんとうの定年後』

ここでは、フリーランスとして働く人の職種を3つのカテゴリーに分けている。第一は、国家資格が必要になる職種などが含まれる高度な専門性が必要とされる職種である。これは医師や弁護士、公認会計士、建築設計など、イメージとしては10年かあるいはそれを超える程度の勉学や実務経験を必要とする職種である。

このように業務独占資格でかつ取得難易度が高い資格を持つ人は、歳を取っても同じ仕事で働き続けやすい。これは専門性が高いからというのも理由の一つではあるが、その名の通りこれらの資格によって仕事が独占されているということが大きい。そうした規制が新規参入者にとっての参入障壁となり、厳しい競争を免れることができる。

こうした資格は、法令改正などによる知識のアップデートをその都度しなければならないが、必要とされる知識が根本的に変わることはないという事情も大きいだろう。