5年で3度の監督交代
彼にとっての危機は負傷欠場だけではありませんでした。「監督交代」も続きました。ソーシア、オースマス、マドン、ネビン。5年目で4人は多いですよね。
自ら交渉の場に出てきて熱心にエンゼルスへ勧誘してくれたマイク・ソーシア監督が2018年、大谷のメジャー1年目シーズンを終えた時点で10年契約を終え退任しました。どこの会社でも、自分を採用してくれた上司がいなくなるのは不安でしょう。
監督が代われば、作戦も方針も選手起用も変わります。ソーシア時代は監督自身が常にリラックスしていてクラブハウスに楽しみの要素を持ち込むこともありましたが、オースマスは厳しい規律を持ち込みました。ただチームの成績は振るわず、1年で解任となりました。
球場外での素行については噂すら耳にしない
その後やってきたのはタンパベイ・レイズを初のワールドシリーズ進出に導き、シカゴ・カブスで108年ぶりのワールドシリーズ制覇を果たした名将、ジョー・マドンでした。
忘れてはならないのは、2020年シーズンは大谷翔平にとっても、ジョー・マドンにとっても、そして全世界にとっても最悪の一年だったということです。前年シーズンオフに膝の手術を受けたため満足な下半身のトレーニングを積むことができず、新型コロナウイルスによりシーズンそのものが短縮され、観客の入場も許されず、大谷自身投手として全く振るわなかったうえに打撃でも全く結果を残せず、先発落ちの憂き目にも遭ったからです。
彼自身、これまでに「いままで僕はさんざん疑り深い目と戦ってきました」と語っています。彼がこの逆境をはねのけられた一番の要因は、「ベースボールだけに集中し、ベースボールにすべてを捧げる」という姿勢が変わらなかったからだと私は思います。
大金も名誉も全てが手に入るMLBには誘惑が少なくありません。それにより道を外した選手はいくらでもいます。つい最近、エンゼルスタジアムで2002年ワールドシリーズ優勝チームの同窓会が行われました。しかし、約20年ぶりの晴れ舞台にもかかわらず姿を現さず、完全に消息不明となってしまった元選手もいます。現役でも、サイ・ヤング賞を受賞しながら球場外の問題で出場停止になっている選手もいます。
その点、大谷翔平は、球場外での素行について噂を耳にすることすらなく、私が知る限り完全にクリーンです。それだけ野球に集中していて外出もない。実はそれが一番の秘訣であり資質だと私は思います。