「ブラック職場」とは正反対の週休3日制

児玉はブラック職場を嫌って起業しただけに、ラクサスでもユニークな経営を取り入れている。

代表例は2017年に導入した週休3日制だ。人生には子育てや介護など大事なイベントがいくつもある。会社に長く勤務している社員であれば、ほぼ間違い必ずワークライフバランスの問題に直面する。そんなときに本人が望めば週休3日制を選べるのだ。

写真=iStock.com/Tatomm
※写真はイメージです

「経営者の多くは消費者のニーズをくみ取れと号令を掛けている。けれども社員のニーズも十分にくみ取っているのかどうか。ここが出発点だったですね」

週休3日制は人材流出を防ぐうえで効果を発揮している。子育てや介護だけでなく、資格取得のために会社を辞めたいと申し出る社員も多い。児玉は弁護士資格の取得を目指す社員と次のような会話をしたことがある。

「弁護士資格を取って自分のスキルをもっと高めたいんです」
「ならば週休3日へ移行したらどう? 働きながら勉強できるのでは?」
「週休3日ならできると思います!」

結局、社員は会社を辞めないで済んだ。弁護士資格を取れなかったからといって非難されることもない。

出産・子育てを理由に退社する女性も少ない。子育て中の女性社員の比率は16%に上る。ちなみに社員はざっと100人で、そのうち女性比率は8割以上だ。

社員の健康・ウェルビーイングが何よりも重要

ラクサスは週休3日制に加えて、朝食・昼食・軽食を無料で提供したり、社内に運動用のフィットネス機器を設置したりしている。まるで米著名経営コンサルタント、トム・ラスのアドバイスに従っているようだ。

ラスは「経営者は仕事中に運動して汗を流し、社員に対して模範を示せ」と言い、生産性向上のためには社員の健康・ウェルビーイングが何よりも重要と説いている。自著『座らない!』(新潮社)の中で次のように書いている。

〈経営者として社員の健康・ウェルビーイングに投資したら、きっと報われます。意志さえあれば、現在働く社員と将来加わる社員の人生を劇的に変えることができます。(中略)有能であるうえ活力にあふれた社員をそろえ、毎日営業の最前線で顧客対応させたら、企業としても成長します〉