建築家の隈研吾氏が設計した「洗練された虫塚」

ミツバチ塚は福島県会津若松市や千葉県館山市、神奈川県厚木市、岐阜市、和歌山県海南市などでも見られる。

近年のユニークな虫塚の例としては、解剖学者の養老孟司氏が2015年に鎌倉の建長寺に建立した虫塚がある。これは日本一、洗練された虫塚かもしれない。設計は、建築家の隈研吾氏である。

虫塚はゾウムシの頭部を模った石像を中心に置き、周囲を金属製の虫かごが取り巻くモダンな意匠。金属部分には粘土が吹き付けられていて時の経過とともに苔が生していくという演出が込められている。

養老氏は虫塚建立記念法要の挨拶文でこのように述べている。

長年虫を標本にしてきましたので、その供養が第一です。解剖学教室に奉職している間も、毎年解剖体慰霊祭に参加してきましたので、慰霊の癖がついたのかもしれません。虫に霊や心があるかというご意見もあるかと思いますが、睡眠に関する遺伝子が見つかっているので、意識はあるのではないかと思います。

翻って、人間の弔いは簡素になるばかり。弔いの「原点」を、いつまでも大事にしたいものだ。

撮影=鵜飼秀徳
1854(嘉永7)年に建立された神奈川県三浦市の福泉寺にある「虫」と「魚」の墓
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