エイヤッと買ったが、持て余した500万円の土地
当時、世の中はバブルに突入していて、日本中で別荘地開発や半リゾート分譲地(自然が色濃く残っている土地を定住もできる住宅地として開発したもの)が造られていました。
私もその頃は雑多な仕事を寝る時間もないほどに抱え込んでいてそこそこの収入があったため、調子にのって福島県の某高原にできた別荘地の一角を、迷った末に購入しました。価格は500万円ほどで、その全額を銀行ローンを組んで支払いました。当時の銀行住宅ローンの金利は8%近かったので、銀行もホイホイ貸してくれました。
土地だけですから、家を建てるためにはさらに最低でも1000万円以上のお金がかかるでしょうが、とりあえず土地だけでも持っておけばいいか、という気持ちでした。無理そうなら売ってしまえばいいと思ったのです。
しかし、冷静になってみると、やはり家を建てる金は作れそうにありません。また、購入したときは別荘地を売り出した直後だったので、建物はまったく見当たらず、区分けされた土地だけが並んでいたのですが、これからどんどん家が建ったら、山の中に普通の住宅街ができるだけで、すこしも自然と親しむような生活はできないと気づきました。
丸森の「山一つ物件」とは違い、別荘用分譲地として売り出されているので、一応簡易水道のような設備は各戸に引いてありましたが、改めてよく見ると、呼び径13mmの細い塩ビ管で、水量はちゃんと足りるのかしらと不安になるような代物です。下水処理はどうなっているのかとか、そのへんのことまではあまり考えずに、エイヤッと買ってしまったことを反省しました。
今、家を新築するのは絶対に損
結局、数年後、バブルがはじけて土地の値上がり神話も崩れる気配を感じ、販売していた不動産会社に買い戻してもらいました。そのときの買取り価格は900万円ほどでしたから、銀行の金利を差し引いても損はしなかったどころか儲かった計算です。
そのときの判断が正しかったことはすぐに証明されました。バブルは一気にはじけ、その分譲地を開発したデベロッパーも倒産したのです。もちろん私が買った土地の価格も急落しました。土地バブルというのはこういうものなのかと思い知りました。
話が多少脱線しましたが、とにかく、土地だけの物件は、いくら安くてもうっかり手を出すと痛い目に遭います。そこに新たに家を建てるだけで千万円単位の金がかかることを忘れてはいけません。よほど資金があるなら別ですが、間違っても家の建築はローンで、などと思ってはいけません。ましてや建築資材が急騰し、住宅設備品の入手すら難しくなっている今は、家を新築するのは絶対に損です。