わずか10分で臨時運行が開始される

先発、次発、次々発とすべて各停だった駅構内の行き先表示が、パッと切り替わって赤字の急行池袋行きが挟み込まれる。この表示は駅で変えているわけではない。

脇田さんから「パターン6」と連絡を受けた西武鉄道本社の運転司令がパターン番号を入力することにより、関係する駅の案内や信号制御パターンに応じた制御に一斉に切り替わるのだ。

筆者撮影
電光掲示板の行先表示が一気に変更する

運転司令からは各駅や乗務員の詰めている乗務所、在線しているすべての列車にも、「パターン6」で臨時列車が走ると通知される。一斉に情報が共有されて、全線で運行できる体制が取られるまでわずか10分ほどだという。

他社の乗換案内アプリには表示されない臨時電車

ホーム上には試合終盤からちらほらと帰宅客の姿があったが、ゲームセットと同時に、どっと数が増える。ラッシュアワー到来。次から次に人々が駅の改札を抜けて、急行の停まっているホームに向かう。閑散としていた駅構内は、あっという間に人だらけに。

脇田さんもマイクを持ってホームに向かい、乗客を誘導し始めた。

「21時47分発池袋行き急行は4番ホームです。前の方が比較的すいています。前の方へお進みください」

筆者撮影
電車に急ぐ乗客の姿

誘導する側も手慣れているが、誘導される乗客も慣れている感じ。みなさん足早に車両前方へ。すいていると知っているのだ。すぐに次の電車があるとわかっているせいか、駆け込み乗車もほとんどなく、1本目の臨時急行はすんなり定時に発車。

スマホの画面を見ている人がいるのに気づいて広報担当者に聞いてみると、「西武線アプリ」には狭山線の「パターン6」の3列車が表示されていた。情報共有が行き届いている。ちなみに他社の乗り換え案内アプリでは、この確定したパターンの情報は反映されていないという。

魔法のようなダイヤの効果

客足はどんどん増える。各停を挟んで、2本目の臨時急行が22時2分に出発。改札口に近い車両だけを見ればかなりの混み具合だが、全体では乗車率160~180%ほど。足の踏み場もないという感じではない。前方の車両にはまだ余裕がある。

2本目が出た後も、改札の外にも群衆が見える。

「ほんとに大丈夫なの?」と思えたが、3本目の臨時急行がやはり満員の状態で22時17分に出発したとたん、ぱたり、と客足が途絶えた。思わず「えっ?」とあたりを見回したが、ほぼ無人。長大な行列の最後尾がちょうど列車に吸い込まれたような感じ。魔法のような野球ダイヤの効果を目撃させてもらった。

「おつかれさまでした。今日もうまくいきましたね」

脇田さんの表情も明るい。