無駄な労力を省くため、記憶すべき内容の精度も検証したほうがいい。
「たとえば暗証番号のような数字は、すべての桁を覚えなければ意味がない。でも、会社の売上高などの量的な数字なら、『およそ213億円』といった大雑把な数字で事足りるのでは?
そもそも、量的な数字は何かと比較するためのものです。目的に合わせて、競合A社の3倍、もしくは前年比2倍、といったように、比較に必要な形で記憶すれば十分だと思います」(西内さん)
「覚える対象」を取捨選択したら、次に考えるべきは「どう覚えるか」。西内さん曰く、ポイントとなるのは記憶すべき“情報の圧縮”である。情報を分解し、規則性を見つけて関連づけることで、覚えやすくするのである。
「circumstance(状況)」という単語を例にあげよう。まずは、「cir-cum-stance」と文節に分けてから、「cir=サークル(cir-cle)=円、輪、周りに」+「stance=スタンス、立っているもの」=「自分の周りに立っているもの」=「状況」だと考える。これならば意味も類推できるし覚えやすい。一つの語源の意味を覚えれば、類語にも応用可能だ。
「stance」が「立っているもの」だとわかれば、「distance」は「反対」を表す「dis」とセットだから、「近くに立っていないもの」=「隔たり」という覚え方ができる。さらに、「disarm」なら「反・武器」で「武装解除する」というように、どんどん語彙を増やしていける。
西内さんによると、このやり方は、普段から細部よりも、物事の大きな流れを把握することが得意な人に向いているという。
「中学・高校時代に英単語を覚えたときは、繰り返し書き取って、力業でスペルを暗記していました。日本の学校教育ではそういう教え方が主流ですが、文節に分けて規則性を見つけることで、圧倒的に覚えやすくなるはずです」(西内さん)