今後、原発が停止したままなら、代替エネルギーの輸入が増えるだろう。そうすると、月額5000億円の黒字から、1兆円近い貿易赤字が常態化し、日本が、これまでの貿易黒字でためてきた100兆円近い外貨準備を、大切に使わなければいけない時代になる。
日本の製造業のアメリカ化、貿易構造のアメリカ化を、とめる術はない。この動きを、“物理現象”として理解し、頭を切り替えるしかないのだ。
問題は、空洞化する国内でいかに新しい産業をつくり出していくかである。
では、このような状況下で80年代のアメリカはどうしたか。レーガン大統領のもと、金融や通信、物流分野の規制撤廃を徹底的に行ったのだ。その結果、「ソフトウエア」や「金融」などの新しい産業が花開き、空洞化の穴を埋めた。
私は次世代のカギを握るネット時代の三種の神器は、「ポータル」「決済」「物流」だと考えている。そして、この3つの分野をしっかり握っているのがアメリカの強みだ。日本の場合、製造業に代わるお家芸が生まれていないし、他の産業を育てる政府レベルの努力も全然足りない。もともとソフトウエアやサービス産業が弱点だった日本で、今もってこの分野でグローバル化を果たした日本企業は数少ない。
今後日本が何でメシを食っていくのかということを、いよいよ考えなければいけない時代にきているのだ。
3月の貿易収支が黒字になったといって「回復」を解説してみせる程度の政府も問題だが、現状維持に甘んじて、新しいものを何も生み出せない企業も自覚が足りない。それが、大問題なのである。
※すべて雑誌掲載当時