必ずしも厳しくない「政治と宗教の関係」に対する日本人の見方
特定の宗教団体の応援で当選した政治家は、その宗教団体を優遇する方向で影響力を行使しかねない。従って、反社会的な宗教団体からの選挙応援については、政治家は受け入れるべきではなかろう。統一教会系の団体による選挙応援について、大きな問題となっているのもこの点をめぐってである。
日本国憲法は第20条で、信教の自由を保障する一方、「いかなる宗教団体も国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」と明記している。宗教によって政治が支配されたり、国家が宗教を使って国民を思うように支配したりして、古今東西、多くの弊害が生じてきた歴史があるからである。
しかし日本の憲法解釈では「政治上の権力」は立法権、裁判権、課税権などとされ、選挙の支援や政治献金などの政治活動は基本的に「政治上の権力」行使には当たらないとされており、グレーゾーンを残している。
ローマ教皇のような宗教指導者が、例えばイタリアの議会選挙の直前に特定の政党は望ましくないと発言したら、その政党の候補者は軒並み落選するであろう。世俗権力と宗教権力の間の長いいさかいの歴史を有するヨーロッパでは、こんなことで政治がゆがめられるのは避けたいという国民の意見が多数派となっている。
カルト教団に関する調査とともに、2018年のISSP調査では、こうした政治と宗教の関係についても質問しており、その結果を図表2に掲げた。
ヨーロッパの先進国を中心に、宗教指導者による選挙への影響力行使は「許されない」という意見が大多数を占めている。「許されない」の割合が最も高いのは台湾の88.6%であるが、最も低いイスラエルでも59.1%と過半数が「許されない」としており、カルト教団への許容度とは異なり、世界的にそう大きな違いはない。
主要先進国の中では、イタリア、フランス、ドイツでは「許されない」が、それぞれ、84.4%、80.6%、79.5%と国民の多くを占めている。
他方、米国は、カルト教団への比較的高い寛容度と同様に、「許されない」は71.1%と主要先進国の中でも最も低くなっている。
主要先進国のうち、英国と日本は両者の中間に位置するが、日本は72.7%と米国に次いで「許されない」の割合は低く、政治と宗教の関係にあまり厳しくない。
日本人のこうした見方が、統一教会のような反社会的な集団からでも、選挙への影響力行使を許してきた政治家が少なくなかった背景をなしているといえよう。