サプライチェーンの再構築に大いに役立つ

例えば、コロナ禍でのテレワーク実施にクラウドは不可欠になった。クラウドでデータや情報の保存、加工を行う表計算や文書作成ソフト、情報セキュリティーなどがパッケージとして提供されることによって、企業は事業運営の持続性を高めることができる。生産性も向上する。個々人の生き方も大きく変わった。クラウドがあるからこそ、生活費がかさむ都市を離れ、自然豊かな郊外や地方でより満足度の高い生活を送る人が増えた。

世界のサプライチェーンの再構築においてもクラウドの果たす役割は大きいと考えられる。米中対立、コロナ禍の発生、ウクライナ危機などによって世界の供給網は不安定化した。その結果として世界の企業は需要に応じて供給を柔軟に調整することが難しくなっている。

クラウド上でサプライチェーンを構成する企業がデータを相互に共有することができれば、供給制約が、どこで、どの程度の深刻さで発生しているかが分かるようになるだろう。AIを用いることによって、将来的な供給制約の発生シナリオをより精緻に分析することも可能になるはずだ。

個人向けビジネスから貿易、安全保障分野まで

クラウドの発展の可能性は高い。ピチャイCEOは、クラウドに、未開拓の大海原が眼前に広がるようなイメージを持っているのではないか。その意味においてクラウドの分野は“ブルー・オーシャン”だといえる。将来的にグーグルはクラウドを基盤にして分散型元帳技術と呼ばれる“ブロックチェーン”などの最先端のネットワーク・テクノロジーの利用可能性を高めようとするだろう。

例えば、国際貿易の分野ではブロックチェーンを用いることによって不正の撲滅と事務作業の効率化が目指されている。一例として、船舶の輸送に欠かせない船荷証券の作成には多くの人手がかかってきた。それに加えて、近年では国際社会の安全保障に関する責任を履行するために、軍事転用が可能な民生品の輸出管理が厳格化されている。

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書類作成、その確認などをブロックチェーン上で行うことによって、サプライチェーン上に存在する企業が相互に手続きの正当性を、より効率的に確認できるようになる。グーグルはクラウドの機能向上を支える一つのアプリケーションとしてAIの利用可能性を高めようとしているだろう。このようにして、加速度的にクラウドの拡張性が高まると期待される。