タイプがわかれば、「うまくいかない原因」も見えてくる

ハーマンモデルの利用法についての説明が少し長くなってしまいましたが、これがいかに部下の話を聞くときに役立つか、伝わりましたでしょうか。

実際に、私がクライアント企業の社員にヒアリングしてみると、夢多きDタイプの社員が、会社の将来を考えて行動しているのに、計画重視で保守的なBタイプの上司から見ると「どうしてアイツはいつも段取りもなしに勝手に動くんだ!」と苦々しく思っている……などということがよくあります。

そんなときは、Dタイプの社員からすると、「どうして会社はオレの気持ちをわかってくれないんだ!」となるわけです。

例えば企業が人材を採用しようとするとき、Dタイプの人を採用したとしますよね。ところが、職場で働く人の多くがBタイプの人だったら、新しく入社したDタイプの人は「なんだ、この会社!」と働きづらさを感じるかもしれませんね。

実際に、そういう実例も見たことがあって、社長さんに「採用の方針と職場の実情が合ってませんよ」とお伝えしたこともあります。

そういう、タイプの違い……というか好みの違いによって起こっている「うまくいかないこと」の原因が、このハーマンモデルを知っていることで「ああ、そういうことね」と理解できるようになるのです。

好みが違うだけで優劣は存在しない

部下の一人ひとりが、どのタイプなのか見立てられるようになると、例えば面談のときに、Aタイプの部下が、Cタイプの同僚に対して、「○○さんは、会社を仲良しクラブだと思っていて困る」なんて不満を持っていると言ってきても、「それはたしかにあなたから見ればそう感じるだろうね」と余裕を持って聞くことができます。

林健太郎『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか? 職場の心理的安全性が高まる本』(三笠書房)

相手の好みがわかれば、こちらからの問いかけの言葉も変わってきますし、部下も「私の気持ち、わかってくれるんですね!」とばかりにモチベーションが上がり、発言が変わってくるでしょう。

傾聴を相手に合わせてカスタマイズすることができるため、信頼関係の構築にも有効なのです。

ちなみに、ハーマンモデルについて、こんな一文を目にしたことがあります。

「世界中の人たち全員のハーマンモデルの結果を重ねてまん中を取ると、凸凹がなくなって真四角のグラフになる」

要するに、世界中には、まんべんなく、偏りなく4つのタイプの人が存在するということですね。

つまり、「どの好みを持つ人がより優れている」といった優劣は存在しないということです。

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