「政」だけでなく「官」もカネで動かそうとした

【佐藤】その保険は、ちゃんと効くのです。でも、一方でけっこう陰険なお金の使い方もしていたんですよ。角栄にかわいがられていた鈴木宗男さんは、そのあたりについても間近で見ていました。角栄は、当時赤坂にあった2軒のラブホテルの鍵番のおばさんにも「献金」していたのだそうです。それで、政治家や高級官僚が女性を連れ込んだら、その情報を届けてもらう。それを持って、「よっ、先週は頑張ったね」と、当事者を暗に脅すわけ。(笑)

【池上】それは、政治家にとって、ある意味金を受け取った現場を見られるよりも恐ろしい。(笑)

当然、政治家にも金をばらまいたわけですね。違う派閥の政治家にも、野党の人間にまで渡していた。熱烈支持にならなくても、敵にならなければいいんだ、という発想だったのでしょう。

池上彰・佐藤優『組織で生き延びる45の秘策』(中央公論新社)

【佐藤】政権の中枢に食い込んでからの角栄は、「政」の世界だけでなく、「官」も金の力で動かそうとしました。

【池上】大蔵大臣になった時には、職員全員に高級ネクタイをプレゼントして、大蔵省全体を買収したと言われました。

【佐藤】ただ、金の力で全てを抑え込める時代が転換点を迎えているというところは、見誤ってしまった。

【池上】だから、最後は、その金が命取りになってしまいましたよね。

【佐藤】政治家の露骨な「カネ問題」に一つのけじめをつけるという意味では、田中角栄という人は、時代的にちょうど必要な存在だったと言えば、言い過ぎでしょうか。

関連記事
プーチンの目論見は完全に裏目に出た…軍事的中立を保っていたフィンランドが西側に助けを求めたワケ
【第1回】「無謀な命令を繰り返し、部下を無駄死にさせる"乃木希典"のような上司」をスマートにかわす最良の対処法
中国の覇権を止められる政治家はほかにいない…安倍元首相の死で、インドは国を挙げて一日中喪に服した
本来なら警備があんなに手薄なはずがない…「安倍元首相銃撃事件」で警視庁出身者が抱いた"強烈な違和感"
「安倍元首相の死は自業自得だ」と言う安倍批判派の人たちに伝えたい「安倍晋三・昭恵夫妻」の知られざる姿