円安による食料品の価格上昇もエンゲル係数に関連

報道によれば「総務省が2014~16年のエンゲル係数の上昇要因を分析したところ、上昇幅1.8ポイントのうち、円安進行などを受けた食料品の価格上昇が半分の0.9ポイント分を占めた」という(毎日新聞2017.2.18)。

こうした高齢化、共働き世帯の拡大、食料価格上昇という3つの要因が世界の中でも特に日本で大きく作用していることが、エンゲル係数の反転上昇カーブが特に日本で鋭角であることに結び付いていると考えられよう。

さらに私はもう1つの要因がエンゲル係数の反転上昇を目立たせる方向に作用したと考えている。

日本で情報通信革命が通信費を上昇させた1995~2005年の時期には、生活水準が上昇していなかったにもかかわらず、エンゲルの法則に反して、エンゲル係数が低下した。世界的に情報通信革命が進展していた同時期に、米国と英国を含めて、すべての国でエンゲル係数が下がり続けていた状況が認められる。

すなわち、日本と同様に情報通信革命が大きく進行した時期にエンゲル係数が下方シフトし、それが落ち着いてきて、上記3要因によるエンゲル係数の上昇傾向が目立つようになったというのが、先進国共通の動きだと推測できよう。こうした点に興味がある方は、筆者が執筆・運営するサイト「社会実情データ図録」の図録2355を参照されたい。

エンゲル係数の今後の見通しについては、世界の潮流として、高齢化や共働き世帯の増加は、なお続くであろうし、世界的な食料価格の上昇も地球規模で極貧人口、飢餓人口が大きく増加しているのに伴う食料需要の増加の表れだとも考えられるので、なお解消していく可能性は低い。

写真=iStock.com/Tetiana Strilchuk
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そうだとすると、エンゲル係数の上昇という先進国共通の動きは今後も、すなわちコロナの流行が収まったとしてもなお続くと考えられよう。否、むしろ、コロナの流行下で経験した家庭内で食事や料理を楽しむ生活態度が今後も定着し、エンゲル係数を高止まりさせる可能性さえあろう。