食費支出が過当に少ない英語圏諸国

次に、図表1で取り上げた主要国だけでなく、多くのOECD諸国を対象に、本当に所得水準とエンゲル係数とが相関しているかを確かめてみよう。

図表2には、OECD諸国のエンゲル係数と所得水準の相関を示す散布図を掲げた。

米国をはじめとする英語圏諸国は所得の割にエンゲル係数が低い

所得水準の値がかなり外れ値であるルクセンブルクとアイルランドを除いて相関を確かめると、ほぼ、所得水準の高い国ほどエンゲル係数が低いという古くから知られているエンゲルの法則が成り立っていることが分かる。

ただし、所得の割にエンゲル係数が高い国、低い国があることも図表2からうかがわれる。

だいだい色で示した回帰線より下に外れ、所得の割にエンゲル係数が低い国、すなわち所得の高さ以上に食費にお金をかけない国としては、所得に低いほうから、コスタリカ、ポーランド、スロベニア、英国、カナダ、オーストラリア、ドイツ、米国などが目立っている。

このうち、所得の高いほうの国は、ドイツを除くとすべて英語圏諸国であり、歴史的には英国植民地だった国である。

こうした国では、食費にお金をかけない気質があると考えざるをえない。共通しているのは、ファストフードがさかん、美食の国ではない、食事に時間をかけない、食料価格が低い、といった特徴で、先進国の中でもやや特殊な食文化グループを形成しているといえよう。

主要国におけるエンゲル係数の時系列変化を追った図表1では、日本、フランス、イタリアのエンゲル係数の高さが目立っていたが、図表2をみると、これらの国はむしろ普通の所得水準対比のエンゲル係数であることが分かる。

先進国の中で、所得水準対比でエンゲル係数が高い国、いわば「食い倒れの国」としては、スペイン、チェコ、アイスランド、オーストリア、ノルウェーなどがむしろ目立っていると言えよう。スペイン、オーストリアは外食費が大きいという特徴があり、そうした要因も影響している可能性がある。