高齢化、共働き世帯増、食料価格高騰で「反転上昇」

エコノミストらの分析を参考にすると、エンゲル係数の反転上昇の要因としては、主として以下の3つが想定される。

まず、世界の中でも突出した高齢化である。先進国では高齢化に伴って、退職後の高齢世帯やひとり暮らし高齢世帯が増加している。食費以外の教育費などの負担が減る高齢世帯や食べ残しが多かったりするため食費が割高になりがちなひとり暮らし高齢世帯ではエンゲル係数が高くなるという特徴がある。

従って、高齢世帯の割合が増えればエンゲル係数を押し上げる効果が働くのである。また、高齢化に伴って生産年齢人口が減れば経済成長率が低下するのでエンゲル係数の下落を遅らせる効果もあろう。

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次に、女性の社会進出や女性就業率の上昇に伴って、ますます共働き家庭が増え、各国で食費に占める調理食品や外食の割合が増えている。調理食品や外食は加工やサービスの費用が加わっているので、同じ栄養価を得るための費用は家庭内で調理する場合に比べると高くなるはずであり、食費を全体として拡大させる要因となっているのは間違いなかろう。

第3に、食料価格の高騰が挙げられる。図表1を見ると、2009年には、日本、ドイツ以外の国でエンゲル係数が短期的に跳ね上がっているが、これは、2008年の穀物価格の急上昇の影響と見られよう。日本がその時期にエンゲル係数に大きな変化が見られなかったのは円高傾向が相殺要因として働いていたからである。

その後も国際的な穀物価格は以前と比較して高値を続けており、これが各国の食料価格を上昇させ、結果としてエンゲル係数を押し上げる要因となっている。

日本の場合は円安傾向や消費税引き上げがこれに拍車をかけている。2015~16年の円安は日本のエンゲル係数を特異に上昇させる要因となった。また、2014年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられた影響も加わっている。医療費や学校の授業料など非課税品目を含む消費全体に対して消費税が引き上げられた食料品価格は相対的に上昇したのである。