水位が安定しなければ貨物船にも打撃

世界的な異常気象によって、各国で旱魃などが深刻化している。給水車が一度に運搬できる水の量は最大で20トン程度とみられる。台湾には聯華電子(UMC)や力晶半導体(パワーチップ)などの半導体メーカーが集積している。世界の半導体供給地である台湾で、水が不足し半導体供給が停滞するリスクは高まっている。

熊本県でTSMCは経済産業省の支援を取りつけ、ソニーグループやデンソーと合弁で半導体工場を建設する。その背景のひとつには、同県の豊富な水資源があるだろう。

水不足などは物流にも影響する。米国では異常気象でミシシッピ川の水位が大きく変化する恐れが高まっているという。ミシシッピ川は米国が輸出する穀物の49%が通る。水位が安定しないと、はしけ船(貨物を載せる大型の平底船、動力を持たずタグボートなどに曳航される)の稼働率が下がる。

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気候変動の深刻化による水不足は、世界のサプライチェーンの脆弱ぜいじゃく性を高める。上下水道など社会インフラが発展途上にある新興国において、水不足が人々の健康に大きな脅威であることはいうまでもない。

互いに共鳴するようにして負の影響を与える

昨年夏場以降、水不足によってノルウェーでは水力発電に必要な貯水量が減少した。ノルウェーは主に水力で発電を行う。余った電力は欧州各国に輸出してきた。水不足が深刻な状況が続けば、ノルウェーからの電力輸出は減少するだろう。それは、欧州経済にとって大きなマイナスだ。

また、欧州各国はエネルギー資源のロシア依存脱却を急がなければならない。電力の需要を満たすために、苦肉の策としてドイツは石炭を用いた火力発電を再稼働せざるを得なくなった。さらに、6月下旬にドイツでは天然ガス不足の“非常警報”が発出された。電力供給の切迫感は増している。

電力不足と水不足は、互いに共鳴するようにして経済に負の影響を与える。米中対立、コロナ禍の発生、ウクライナ危機などによる、世界経済の供給制約は一段と深刻化することが懸念される。銅鉱山などでは、破砕のために大量の水が必要だ。旱魃の深刻化と電力不足が重なり、破砕用水の確保がより難しくなる恐れは増す。