「声の大きな人間が勝つ」というのはどういう意味か
よく「声の大きな人間が勝つ」と言いますが、このフレーズには「言ったもの勝ち」「押しが強いもの勝ち」的な否定的な意味合いが多分に含まれています。また、「声が大きい人は自己中心的で人の話を聞かない」などとも言われているようです。
しかし企業という組織のなかで出世する人、偉くなる人、人の上に立つ人には、声が大きい人がとても多いというのは紛れもない事実です。声が大きいと、話の内容はたいしたことがなくても、イマイチ意味がわかりにくくても、ちゃんとした主張のような気がしてくるもの。同じことを話しても、声が小さい人より大きい人のほうが真実味も増して聞こえるものです。
確かに声が大きければ、その人の存在感や説得力が増して、会議や議論の場でも自分の意見が通りやすくなるという傾向はあるでしょう。でも、「意見が通りやすくなる」のは声の大きさがもたらすメリットであって、そのメリットをどう生かすかとはまったく別の問題。声がどれだけ大きかろうが「通りやすくなったから、自分の意見を何でも押し通そう」と考える人に、人はついていきません。
私がここで言う「声が大きい」とは、うるさくて騒々しいだけの雑音的大声ではありません。いうなれば「声に張りがある人、声がよく通る人」に近いニュアンスです。
テレビのバラエティ番組で、お笑い芸人さんたちがよく「もっと声を張れ」と言っているのを見かけます。声を張れとは、もっと大きな声で話せということです。私もこれまでに何度もテレビに出させていただいていますが、声が小さいと収録もスムーズに進みません。
小さな声ではマイクでも声をうまく拾えず、結局は何を言っているかわからない。せっかくおもしろいことを言っても、それが聞こえなければ意味がありません。結果として、その番組内での存在感も薄くなってしまうでしょう。「そんなことで、芸人として大丈夫かよ?」という冗談を込めた「声を張れ」なのです。