他のゴミ屋敷にはない「底なしの暗さ」を感じた

「ねずみのフンが大量にありますよ」

ベテラン作業員に教えてもらった。小指第一関節くらいの黒い塊が部屋の隅に点々と落ちている。そばにあった穴あきの袋は、ネズミが食いちぎったものと聞いた。

これまで作業員として働いたなかで、人が亡くなったゴミ屋敷も見てきたし、ここよりも物量がずっと多い家もあったが、この元教員の家は他の家にはない“底なしの暗さ”を感じた。作業を続けるほど、また家の奥に進むほど、こちらの心が重く、どす黒くなっていくようだった。

作業2日目、私はこの家の2階で言葉を失った。

階段をのぼると左右に1部屋ずつあり、左側の部屋が男性が主に暮らしていた場所である。しかし、そこには数百、いやもしかすると数千にはなるかと思うようなペットボトルなどの飲料や食品の山があったのだ。

撮影=今井一詞
2階の居住スペース。この布団の上で、寝起きをしていたとみられる。

ゴミ山の頂上には布団が敷かれていた

室内空間の半分はゴミで埋まり、同行してくれた写真家の今井一詞さんが「まるでゴミ埋立地だ……」とつぶやく。フタが開いて中身がだだもれしている飲料も、数多くあった。臭いも異様である。人と動物の排泄臭が混じった独特のくささが鼻をつく。そのゴミ山の頂上には布団が敷かれていた。男性は、ここで寝ていたのだろうか。

撮影=今井一詞
作業の合間にカメラをみつめる筆者。

その時、パタパタパタと音がした。ゴミの中にインスタントの空き容器があり、なんとそこから大きなネズミがにゅっと顔を出していた。まるまる太った元気そうなネズミを一匹見かけ、このゴミ山の中には何匹いるのだろうと怖くなる。

作業員の数人がゴミ山にのぼる。そこからゴミの塊を落とす。私は部屋の入り口付近に立ち、処分ダンボールの中に、ベトベトに汚れたそれらのゴミの塊を投げ込んでいく。ゴミの中からはインスリンをうつ注射針が大量に出てきた。家主の男性は、糖尿病だったのだ。