ポリティコは次のように述べ、中国が想定よりも強大である可能性を論じている。

「ロシアとウクライナの軍隊が現在の戦争の初期段階においていかに振る舞うかを正確に予想できなかったアメリカの失敗は、中国というますます強大になっている敵と戦ううえで、アメリカが大きな盲点を抱えているのではないかという恐怖を米政府内であおっている」

予想よりも強大である可能性を念頭に、再評価を行うべきだと同誌は主張している。

実際、昨年8月に中国が極超音速ミサイルを射出した際、アメリカ側の諜報網はこの前兆をまったく把握できていなかった。英フィナンシャルタイムズ紙は、「中国は8月、核搭載能力をもつ極超音速ミサイルの打ち上げ試験を実施した。地球を一周し、目標到達前に加速している。宇宙空間での高度な能力を示すものであり、米諜報機関に不意打ちをらわせた」と解説している。

「楽観論に流された」米下院委員会が認めた情報の不備

中国の軍事力を正しく分析できていないというおそれは、米下院委員会も認めるに至っている。ポリティコによると、米下院の情報委員会は昨年9月、アメリカの諜報機関は中国の脅威に対応できないと結論づける報告書を発表した。

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その報告書によると、従来から楽観論として、中国の成熟に伴い民主化が促進されるとの読みが蔓延まんえんしていたという。そして、アメリカの各種情報機関がこの誤った予測を採用した結果、「中国共産党の最重要目標である権力の保持と拡大から、偵察機関の目をくらませた」と分析している。

中国に対する監視リソースが不足した背景に、中東への偏重がある。国防情報局やCIAなどがアラビア語話者とテロ専門家の採用・育成に力を入れる一方、汎用はんよう的な分析力をもつ冷戦時代の経験豊富な分析官が次々と引退している。

米シンクタンクのハドソン研究所のエズラ・コーエン特別研究員はポリティコに対し、「本心とうわべの脅し、あるいは運用可能な兵器と単なる試作品の違い」を見抜けるだけの、経験豊かな分析官が減ってきていると指摘する。

「過大評価が武力衝突のリスクを高めている」という反論も

一方でこうした見解とは逆に、中国の軍事能力は過大評価されているとの分析もある。米シンクタンクのクインジー研究所は、アメリカが中国など諸外国の能力を「著しく誇張」して評価してきたと述べ、過大評価により武力衝突のリスクが高まっていると主張している。