これが要介護5の現実…リモコンを投げつけられ鼻血がダラダラ

約3カ月ぶりに帰宅した祖母は、より一層理性がきかなくなっていた。

オムツを替えようとする雨宮さんの腕を突然引っかいたり、雨宮さんのメガネを投げたりするのは序の口で、ひどいときは、髪を鷲掴みにして十数本毛を抜いたり、汚物が入ったポータブルトイレをわざと倒したり。リモコンを雨宮さんの顔めがけて投げつけた時は、鼻に命中し、鼻血がダラダラ流れ出た。その様子を見て、「アホや」「面白いな~」と笑うこともあった。

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また、食事の際には、料理の皿をひっくり返したり、口に入れたものを「ぶー!」と撒き散らしたりした。

「退院してすぐの頃は、祖母の暴言や暴力行為に対して、私は声を荒げたり、手をあげたりしてしまいました。まだその頃は、入院前の祖母の記憶が鮮明に残っていたため、私も精神的に不安定だったのだと思います。突然理不尽に怒ったり、暴力行為をしたりする祖母の姿に、いちいち苛立っていました。でもそんな自分が嫌で、眠っている祖母の顔を見ながら、いつも泣きながら謝っていました……」

「大好きな祖母は、もうこの世に存在しない」と言い聞かせた

雨宮さんは、少しずつ自分の意識改革に努める。「赤ん坊の私を育てあげてくれた大好きな祖母は、もうこの世に存在しない」と自分で自分に言い聞かせ、思い込むことにしたのだ。

「祖母は、厳しくも優しくもあり、しっかり者ですが、お茶目なところもたくさんあって、一緒にいると楽しい人。どんなときも私の味方でした。でも、私の知っている祖母はもういない。目の前にいる祖母が、別人のような感覚になるのがあまりに辛すぎました。『もういない』とでも思わなければ心がバラバラに張り裂けてしまいそうでした」

そうした心の持ち方の工夫により、雨宮さんはだんだん気持ちが楽になっていった。