問題は、526兆円も保有している国債
大きな問題は、国債を大量に保有していることです。先ほども述べたように、3月末時点で526兆円です。なぜ、国債を大量に保有することが日銀にとって好ましくないかというと、国債は価格変動をするからです。
価格が上がれば良いですが、価格が下落したときには、たとえ含み損と言っても場合によっては実質債務超過になることがあるからです。
そのため、黒田総裁の前の白川方明総裁(2008~13年)の頃までは、「日銀券ルール」といって、価格が変動する可能性のある資産に関しては、おおよそ日銀券の発券残高程度しか持たないという了解の下で金融政策を長い間やってきました。それが、黒田総裁に代わり、アベノミクスの「異次元緩和」が始まった頃から、大量の国債を保有するようになったのです。
日銀は毎日の資金調整を行うために、国債を売買しています。つまり、国債を買うことにより資金を供給し、逆に保有する国債を売却することにより資金の吸い上げを行っています。そのためには一定量の国債を保有することが必要です。しかし、国債を持ち過ぎると、価格下落リスクにさらされます。そこで「日銀券ルール」が適用されていたのです。
そして、現状日銀は10年国債利回りの上限を0.25%としています。世界的なインフレ圧力に対抗するために、米国はじめ英国、豪州などが政策金利を上昇させ、欧州中央銀行も近いうちの金利上昇を決定しています。そのため、日本円にも金利上昇圧力がかかっていますが、日銀は上限金利の0.25%を死守するために、その金利で無制限に国債を買い入れると表明しています。当面はそのスタンスを変えるつもりはないようです。
なぜ、そこまでして、世界の趨勢から外れて0.25%の金利に固執するのでしょうか。
ひとつは、景気の足腰が弱いため、緩和を続けるということもありますが、一番は、金利上昇による保有国債の含み損の増加を恐れているからだと私は考えています。