部下の本音を聞こうと「西野の館」をオープン

ブランド改革の過程で、西野さんはもう1つのマネジメントスタイルも身につけた。それは部下の気持ちに寄り添うこと。相手の話をよく聞いて心情を理解し、厳しい指摘もするが、その分いい企画が出れば「めっちゃいいじゃん!」と大いに褒める。互いにフラットに話せる場も意識的に設けるようにした。

撮影=遠藤素子

しかし部下からすれば、悩みや課題を感じていても、部長にはなかなか言いづらいもの。そこで始めたのが「西野の館」だ。これは、自ら希望した部下と西野さんが1対1で対話する場で、内容は悩みでも愚痴でも何でもOK。本音や事業上の課題をぶつけてくれる社員も多く、自身の学びにもなったと語る。

「仕事って、いくら能力があっても気持ちがついてこなかったらうまくいかない。だから意欲が下がっている人がいれば上げてあげたいし、障壁があれば取り除いてあげたいんです。心がけているのは、自分を主軸にして語らないこと。常に相手の目線や立場に立って話すようにしています」

1on1の最後は必ず同じ質問を投げかける

「西野の館」は役員になった今も継続中。毎回、最後には必ず「私が何したら一番うれしい?」と同じ質問をしている。それは「声に出してくれたら私が動くよ」という、社員たちへの熱いメッセージでもある。

評判を聞きつけた社長も「小林の部屋」を始めたそうで、西野さんは「強力なライバル店が出現しちゃった(笑)」と楽しそうだ。

一度は断りながらも引き受けた部長職。振り返れば、そこがターニングポイントだったのかもしれない。世の中的には、まだまだ管理職になりたがらない女性も少なくないが、西野さんは「断る明確な理由がない限り受けたほうがいい」と、そうした女性たちの背中を押し続けている。引き受けた先に、必ずその経験からでしか得られないものがあるからと。

そのかいあって、今では後継の女性部長も誕生した。後に続く女性たちのために、今後は「ステップアップや昇格を女性にとって当たり前の経験にしていきたい」と力を込める。

「性別だけでなく、パートナーや子どもの有無を含めてさまざまな環境、さまざまなキャリアの人を増やしていきたいですね。他にも新規事業やダイバーシティ、サステナビリティなど取り組んでいることがたくさんあるので、自分や部下、会社のこれからが楽しみで仕方がないです」

■役員の素顔に迫るQ&A

Q 好きな言葉
私は私

「誰かと比べたくなることもあるけれど、そんなときは、私は私でしかないと思うようにしています。この言葉で大抵の悩みは片づきますね」

撮影=遠藤素子

Q 愛読書
ユクスキュル、クリサート『生物から見た世界』(岩波文庫)

Q 趣味
旅行とお酒とお肉

Q Favorite Item
生き物グッズ

「生き物が大好きで、動物や昆虫をモチーフにした商品を見るとつい買ってしまいます」

(文=辻村洋子)
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