もし戦争が起こったら国のために戦うかどうかという点に関する国民の意識に先の世界大戦が如何に大きな影響を与え続けているかがうかがわれる。「戦争はもうこりごりだ」という感情が強いためと単純にとらえられる側面が大きいのである。

正義感から戦場でこそ役割を果たしたいと、2010年に、志願して国際治安支援部隊(ISAF)の一員としてアフガニスタンにいった元ドイツ軍歩兵はそう考えるに至った過去をこう振り返っている。

「ドイツでは第二次世界大戦の苦い経験から、兵士の仕事を批判的にみる人が多い。でも、僕は子どものころから兵士になりたかった」(東京新聞2016年3月25日)

日本でもやはり自衛隊は社会的評価がかつては今よりずっと低かった。敗戦国に共通の心情があるのだと考えられよう。

もっともドイツは、「はい」「いいえ」の割合が、前回(2013年)の41.7%対54.4%から、今回(2017年~18年)、44.8%対40.6%へと逆転しているのが印象的である(後段の図表2参照)。敗戦国意識から徐々に抜け出し、EUリーダー国として国家意識が高まっているとも見られる。

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日本の場合は、敗戦国だという事情に加えて、日本国憲法が他国の憲法にない戦争放棄条項を有しており、憲法に対する遵法精神の上からは、この問は答えにくい内容をもっているといえる。日本は、「はい」が一番少ないだけでなく、「わからない」が38.1%と世界で最も大きい値を示していることからもそれがうかがわれよう。

第2次世界大戦の敗戦国、および戦争放棄条項をもつ憲法を有する国ということから、こうした回答結果となっているのであって、日本の若者が軟弱になっているからといった素朴な見方はあてはまらないことが、こうした国際比較から分かる。日本だけの調査結果であったら、「はい」と答えた者の少なさの理由として、日教組の影響、若者の軟弱さ、愛国心の欠如などが挙げられた場合、そうかもしれないと誰もが思ったであろう。

逆に、「はい」の比率の高い国は、第1位はベトナムの96.4%であり、第2位以下は、比率の高い順にヨルダン、キルギス、バングラデシュ、中国、フィンランド、インドネシア、パキスタンである。ほとんどがアジアや中東の発展途上国である。

中国は、後にも見るように「はい」の値が前回の74.2%から88.6%へと14.4%ポイントも増加している。日本の隣国の大国なので無関心ではいられない。

欧米先進国は、ノルウェーやスウェーデン、フィンランド、デンマークといった北欧諸国がかなり上位なのを除くと、フランス、英国、米国、オーストラリア、オランダといった順でほぼ中位の水準にある。日本の「はい」の低さの原因の一つとして、経済先進国だからという点も挙げられよう(解釈次第では、経済的に豊かなので敢闘精神が欠如している、あるいは命の値段が高くなっている事情があるとも言えよう)。

なお、共同防衛というより個別防衛を国是とし、そのために「国のために戦う」意識の強かった北欧諸国もロシアによるウクライナ侵攻を受けて次々に防衛政策の歴史的な転換を図っている。

すなわち、スウェーデン、フィンランドは、ロシアを不必要に刺激しないようNATOに加盟せず、個別に国を守るという方針を転換し、NATO加盟を申請するに至っている。またデンマークはNATO加盟国でもEU加盟国でもあるにもかかわらず、これまでEUの共通安保・防衛政策に対しては適用除外権を行使していたのであるが、新たに共通政策に加わることとなった。