なぜ女性は物質的な証拠を重視するのか
女性がなぜお金よりもお金が示すものを重視するのかについては、進化論的に見て単純な理由がある。人類の祖先は数千年前までお金をもたなかったからだ。
女性(と男性)は、預金残高を表わすランダムな数字や、「100」という数字が印刷された長方形の紙の束を重視するようには進化していない。
われわれが進化により重視するようになったのは、「資源」(つまりお金を使って買うもの)だ。物質的な証拠として女性が本当に評価するのは、①生き延びて繁殖し、子どもを養うために必要な実用的な資源、②よきパートナーやよき父親になる可能性を示す、すべての魅力特性を表わす証拠だ。
お金が比較的最近の発明品である一方で、ほかのかたちで引き継がれる富はずっと長い間重要であり続け、女性は生まれつきそれを選択するようになっている。
特性は遺伝的に引き継がれる
狩猟採集社会や遊牧社会、農耕社会では、富は「物質的な資源」(土地、家畜、家、道具)や「具現化された富」(食糧や親からの保護のように、子どもが強い肉体と精神を手に入れるために必要とする生物学的な資源)、「社会資本」(交友関係、ステイタス、名誉、メンター)のかたちを取る。
そのような富を多く蓄えた父親が子どもの利益になることを女性は本能的に知っており、それにもとづいてパートナーを選ぶ。
興味深いことに、社会経済的な成功は遺伝的に引き継がれる(知性と堅実性を司る遺伝子によることが多い)。そして最近の研究で明らかになったのは、経済的な行動──リスクを取る態度やキャリア選択、自営業か会社員か、経済政策への態度、意思決定の合理性、投資のバイアス、資産の分配など──も多くの側面で驚くほど遺伝する可能性があるということだ。
また、お金はほかの特性の遺伝可能性を増幅させる傾向がある。
富をもった親はより多様な機会を子どもに与え、それが知性の遺伝可能性を増幅させる。夫婦がゆたかであればあるほど子どもは遺伝的な可能性を幅広く探索し、長所を伸ばして短所を克服することが簡単になる。