知人の勧めで投資したが投資先が倒産?

父親の仕送りは20年近く続いたが、長年患っていた心臓の病気が悪化し、父親は5年前に他界した。それまで「自分の家族は父親だけ」と思ってきたみどりさんは、父親が亡くなってからは、生きる力を失うくらい落ち込んだそうである。

みどりさんからZoomでの相談を受けた時は、体調が比較的良い時だったらしく、前回の相談から空いた時間の生活状況について、いろいろと報告を受けた。10年もの時間が経っていたが、みどりさんの話を聞くにつれ、私も少しずつ、以前の相談内容を思い出してきた。

今回、みどりさんの相談の目的は、「今後の生活について」である。そこで現在の貯蓄額をうかがうと、「1900万円くらい」とのこと。「相続発生時から500万円くらい減っていますね?」と聞くと、「毎年100万円くらいずつ、貯金が減っています」という。

「現在の貯蓄の内訳を教えてください」
「え~っと、○○ファンドへの投資が1000万円くらいと、普通預金が900万円くらいです」
「○○ファンドって、初めて聞いた名前ですが、どんな投資先ですか?」
「実は、△△さんに勧められて始めたんでよくわかっていないんですが、外国の株などに投資をするので、国内の株などに投資をするよりたくさん儲かると聞きました」

みどりさんの話を聞きながら、私はネットで○○ファンドを検索してみた。すると、HPは見つからず、「○○ファンド 倒産」「○○ファンド 詐欺」「○○ファンドに監督官庁の調査が入る」「○○ファンド 経営者一族が私的流用」など、目を疑うような内容の記事が次々とヒットした。

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「みどりさん、今、○○ファンドについてネットで検索してみたけれど、もしかしたらこの会社は倒産しているんじゃないかしら。HPもすでに閉鎖されているみたいだし、このことはご存じですか?」
「△△さんから、なんとなく話は聞いています。でも、今は暫定的にHPを閉じているけれど、お金は守られていると言われました。それに、投資資金を追加してくれれば、今までよりも良い条件でお金を殖やしてあげると言われているので、今日は畠中さんに、いくらくらいなら追加で資金を投資しても大丈夫なのかも、聞きたいと思っているんです」

正直、「開いた口がふさがらないというのは、こういう時を言うのかな」と感じるくらいだったが、みどりさんが△△さんを信頼しきっているため、「そうなんですね。だけど、みどりさんが投資した1000万円は、おそらく戻ってこないと思います。1000万円もの大金を投資して、しかも投資先が倒産しているかもしれないのに、みどりさんはそのことを自分で確認はしていないわけですね」と、自分としては、嫌味だなと思いつつも、現実を伝えてみた。

するとみどりさんは、「△△さんには、いろいろと愚痴を聞いてもらったり、困ったときに助けてもらったりしているので、△△さんが、私の困ることをするわけはないんです」と、私の言葉にいら立ちを隠せない様子で反論をした。