壺に入れたワインを約2年間も熟成
発見から2年後の2017年、放射性炭素年代測定により、その時期は紀元前6000年から5800年だと分析されました。文字が発明される3000年も前、鉄器時代より5000年も前に、ワインが造られていたことがわかったのです。
しかも、壺が埋まっていた村の土壌にはぶどうの種や茎はなく、栽培していた痕跡も見当たらず、考古学者は、ぶどうの栽培と醸造が別々の場所で行われていたと考えています。
ぶどう栽培は日射がよく栽培に適した地で行われ、収穫後は涼しい場に運ばれ醸造を行ったと思われます。その後も、8つの大きな壺が掘り起こされ、すでに大規模なワイン生産が行われていたと考えられています。
またこの時代、飲料は動物の皮で作った皮袋に入れていましたが、動物の皮では腐敗が起こりやすくワインの風味が損なわれてしまうため、蜜蝋でコーティングした土器に保管していました。
この世紀の大発見は欧米で大きくとり上げられ、高度な生活様式を持っていたことに多くの関心が集まりました。
さらに後の調査で、壺に入れたワインを約2年間も熟成させていたことがわかりました。出来立てのワインはタンニンが強く渋みがありますが、数年寝かすことでワインはまろやかな味わいになります。ちょうど2年ほど寝かすことで豊潤な香りが際立つのです。
通常のボトルとマグナムボトル、同じワインでも味が違う理由
さて8000年も昔、ワインはどのように造られていたのでしょう。
ワイン造りの要は、「クヴェヴリ」と呼ばれる地中に埋めた卵形の大きな壺でした。この壺にぶどうを房ごと入れて、後はワインになるのを待つだけです。
皮や種と一緒に漬け込むと、ぶどうに付着した菌により自然に発酵が促されます。発酵を終えた状態でも皮と種を取り出さずそのまま貯蔵することで、エキスたっぷりのフルボディワインが出来上がります。
当時使用していたぶどうが黒ぶどうなのか白ぶどうなのか測定はできていませんが、地中で寝かせることで温度が安定し、美味しいワインが造られるようになります。
またクヴェヴリの中で300リットルもの大量のワインを保存することで、ゆっくり熟成が進み、まろやかな味わいを醸し出すという効果もありました。より大きな容器で熟成する方が格別に美味しく仕上がります。
これは、私たちが普段飲んでいるワインでも同様で、同じ銘柄のワインでも通常のボトル(750ml)と大きなボトル、たとえばマグナム(1500ml)やアンペリアル(6000ml)を飲み比べますと熟成感の違いがよくわかるものです。
ジョージアでは今も同じ手法で醸造されています。現在は白ぶどうを使用し、果皮と種子を一緒に長時間かけて発酵させます。
通常、白ワインの場合、圧搾後は果皮と種を分けて果汁のみを発酵させますが、果皮も種も一緒に漬け込み、酸素を取り込みながら色素を果汁に抽出することで、特徴的なオレンジ色のワインが出来上がります。
これが今話題の「オレンジワイン」です。この手法は2013年、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。