予想外の泥沼化に苦しむプーチン
つい昨年までは世界で2番目に強力な軍隊との評判をほしいままにしてきたロシア軍だが、今年2月の侵攻によりあからさまな弱さが露呈する形となった。
ウクライナ領特有の泥沼化した土壌に文字通り足をすくわれたとの分析もあるが、そうでなくとも、統率された部隊との印象は皆無だ。
戦地では秘匿性の弱い民間の携帯回線で通信し、また、友軍を誤射する事件が多発している。ロシア兵の救護キットを鹵獲したところ、なかにはほぼハサミしか入っていなかったとの海外報道も出ている。先日のドネツ川渡河作戦では作戦ポイントをウクライナ側に予測され、わずか2日間で70両の戦車および装甲車を喪失した。
軍隊としてのロシア軍をみれば、侵攻を正当化し隣国を蹂躙する行動は断じて許されるものではない。一方で個々のロシア兵を考えるならば、彼らに多少なりとも同情の余地があるとする議論もあり得る。
民間人を虐殺し民家で略奪を繰り広げる蛮行にはあぜんとする一方、旧式の装備を背負って予告なく戦地へと駆り出され、命を危険にさらしている状況は、彼らと彼らの家族が望んだ今日の生き方ではないだろう。
プーチンの戦争が手詰まりの気配を漂わせはじめたいま、ロシア兵のあいだにも不満が鬱積している。兵の命を軽んじる「特別軍事作戦」へ反感が、今後数カ月のあいだに軍内部や国内からの暴動に発展する可能性は十分に考えられそうだ。