「理由としては、FD自体を新しく購入するのが困難になってきたこと。それから銀行に置かれた読み取り装置のメンテナンスが難しくなったこと。万が一、故障してしまったら、市町村の担当者の方が窓口に来られても手続きが滞ってしまいますから。そんなわけで、FDの取り扱いを終了させていただくことになりました」(同)
知るほどに驚く、FDの“現役”利用。だが、それは地方の市町村だけではない。
東京都千代田区は今年3月まで介護保険や障害者介護、生活保護に関する給付金の振込みにFDを使用していた。使用を終了した理由を会計室の担当者にたずねると、こう説明する。
「これまでFDを繰り返し使ってきたのですが、いずれ破損したり経年劣化で使えなくなったりすることも考えられます。もうメーカーもFDの製造を打ち切ったという話も聞いておりました。それらもあって使用を徐々に縮小し、昨年度末をもって、最終的にFDの取り扱いをやめたわけです」
ちなみに、国内大手のFDメーカーだったソニーが国内販売を終了したのは、2011年3月である。もう10年以上前のことだ。
「FDはいまとなっては記憶容量が少ないですし、持ち運びの際にどうしてもセキュリティーの問題も生じます。これからは庁内の端末に入力したデータはインターネット経由でやりとりを行います」(千代田区担当者)
行政サービスの一環として
霞が関の中央省庁もFDを使っている。その一つが、厚生労働省だ。
厚労省は医薬品や医療機器メーカーから送られてきた製品に関する申請書類を審査する。そこでいまも続けられているのが書類データをFDで提出する「FD申請」だ。
「制度の名称としては『FD』とありますが、実際、9割9分はCDかオンラインの申請です。過去の名残というか、通称として『FD申請』という名前が使われています」
同省医薬品審査管理課の担当者はそう説明するが、こうも胸の内を明かす。
「ただ、こちらとしてはせめてCDで出してくださいとお願いしてはいるんですけれど、『どうしてもCDは使えない』という方が、ごく少数ですがいらっしゃいます。行政サービスとしてはうちのFDドライブが生き続けるかぎりはFDを受け付けざるを得ないという事情があります。できれば、持ち込まれるメディアはCDに統一したいのですが、メーカーさんのことを考えると、世の中からFDが枯渇するまでは止められないですね」