考えすぎて不安になり、チャンスに二の足

実は、こうした事例はAさんに限らず、女性に多く見られます。向上心を持って理想を描き、そこに向けて努力する。ところが、「現実」が迫ってくると考えすぎて不安に陥り、目の前のチャンスに二の足を踏んでしまうのです。

こうしたケースは、ワーキングマザーの転職活動でも見られます。「今の会社はサポート業務しか任せてくれない。責任のあるミッションを担い、キャリアを築きたい」と希望したはずが、それがかなう企業から内定を得たにもかかわらず、「今の生活が変わるのは怖い」と辞退してしまうのです。

こうした傾向は、「昇進」のシーンでも見られます。管理職に抜擢された女性が、「自信がない」と辞退してしまう。女性には、自分の能力・実績を過小評価してしまう「インポスター症候群」が多いと言われており、女性管理職を増やしたい人事担当者を悩ませています。

私としては、「思い切って飛び込む勇気を持って!」と背中を押したいです。なぜなら、自信が持てないながらも「とにかくやってみる」と決断し、数年後に「あのときチャレンジして本当に良かった」と笑う女性たちをたくさん見てきましたから。

決断するために大切なのは、「自分は何がやりたいのか」「将来どうなりたいのか」という「WILL」(意思)を明確にし、その軸をぶらさないこと。迷ったときにWILLに立ち返れば、今どんな決断をするのがベストかを冷静に見極めやすくなります。

それでも、不安を感じるのは当たり前のこと。転職先で上司となる方とじっくり対話し、どんな点が不安なのかを伝えましょう。そして、不安を解消するにはどんな環境やサポートが必要なのか、あるいは何を学んでおけばいいのかなど、解決法を言語化してください。「こう進んでいけば大丈夫」という道筋を可視化することが大切です。

そして上司や同僚となる方にバックアップを約束してもらえたら、それを素直に信じ、遠慮なく頼りましょう。

② 受け身の転職活動。「何となく」もらった内定をどうするか決められない

WILLが明確になっていないと、不安に駆られて迷う以外にも弊害があります。「受け身」の姿勢で転職活動を進めてしまうことです。

現状に漠然とした不満を抱き、「環境を変えてみたい」程度の意識で転職活動を始める人は多数いらっしゃいます。そうするとどうなるか。

求人を選ぶ基準がわからない
 ↓
何となく興味がある企業、経験を生かせそうな企業に応募してみる
 ↓
複数企業で内定を得ても、優先順位をつけられない
 ↓
やっぱり転職をやめる
 ↓
元の職場に戻り、再び悶々とした日々を過ごす

こんなループにはまってしまう人は少なくありません。

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