33万人の定住者から25万人、さらに61万人増え…

ポーランドはしっかりした国なので、入国しようとしているのが本当にウクライナ人なのか、あるいは、どういう素性のウクライナ人なのかを、かなり念入りに審査しているようだ。テロリストではないまでも、違う国籍の人がウクライナの偽造パスポートで入国を試みているという噂は最初からあったし、今も消えない(ドイツはコロナの簡易検査だけで、素性の審査はしていないという)。

実は、1991年のソ連の崩壊後、99年までの約10年間で、163万人以上の人々が旧ソ連地域からドイツへ戻ってきた。「戻ってきた」というのは、彼らは数十年、あるいは100年以上も前にソ連に移住した元ドイツ人の子孫たちだったからだ。

そんなわけで、ウクライナ侵攻前のドイツには、すでに33万人以上のウクライナ系の人々が定住していた。そしてそれに加えて、さらに25万人のウクライナ人が、ビザ免除で3カ月滞在できることを利用して、出稼ぎ者としてドイツとウクライナの間を定期的に行ったり来たりしていた。出稼ぎの人たちは、介護関係が多いので、その64%が女性だ。

その上に、今、ウクライナの難民が押し寄せている。ドイツの移民難民局の発表によれば、ロシアのウクライナ侵攻以来、4月末までの2カ月余りの間に入国したウクライナ難民の数は61万人。その7割が女性だ。

ウクライナ難民を受け入れる利点は多い

ヨーロッパにはシェンゲン協定というのがあり、加盟国の間では国境が取り払われているので、現在、ポーランドに入ったウクライナ難民が、すでにドイツで暮らしている親戚や友人を頼ってどんどんドイツに移ってくる。ポーランド政府も特別列車を仕立て、難民の交通費は無料にして、積極的に西への移動を助けた。

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ドイツのほうがポーランドよりも難民保護の手当は厚いし、働き口も多そうだし、何より通貨が憧れのユーロなので(ポーランドはまだユーロ圏に入れない)、特別列車に乗り込む人は多い。ただ、ウクライナ人は自由に動けるので、難民として届け出ず、親戚の家などに転がり込んでいる人も多いはずだし、さらに違う国を目指して出国した人もいるだろう。つまり、正確な数は把握できない。

現在、産業界も医療界もウクライナ難民に白羽の矢を立てている。産業界では、技術職から単純労働まですべての部門で人材が不足しているし、医療現場では看護師、介護士が絶望的に足りない。ウクライナ難民は、まさに棚からぼたもちだ。

それに、ドイツ人にしてみれば、ウクライナ難民は、中東難民に比べて圧倒的に利点が多い。元がソ連なので、社会主義国の常として初等教育が整っている。つまり、皆、読み書きそろばんができ、ドイツ語習得のハードルも低い。また、高学歴者も少なくない。