環境に合わせて生きる人間の不幸

池田清彦著『病院に行かない生き方』(PHP新書)

狩猟採集生活をしていた頃の人間も、環境の変化に対しては能動的な働きかけ(例えば住む場所や狩りをする場所を変えるなど)で対応していたのだろうと考えられるが、いまを生きる人間の場合は、いまいる環境が自分には合わないと感じたとしても、健気けなげにそこで我慢しようとすることが多い。これは、いわば受動的な適応だ。

どんなに居心地の悪い会社でも食べていくためにはそこで働かなくてはならないし、嫌な上司とだって付き合わなければならない。隣人トラブルを抱えていても、すぐに引っ越せる人は稀である。夫婦関係がうまくいかなくても、多くの場合そうやすやすとは離婚できない。幸か不幸か人間は、環境に自分を合わせることをいとわない生き物なのだ。

もちろん人間だって本当は、自分に合った環境で暮らすほうが幸せだろう。しかし、実際には環境だけでなく、生き方までもいろいろな制約がある。野生動物にはあり得ない「心の病」に陥る人が多いのも、まさにそのせいなのである。

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