わずか7ページのペラペラな調査結果から見える意識の低さ
日本郵便は今年1月21日、全国で計104人の局長が、1318人分の顧客情報について不正に流用・流出させていたとする調査結果を公表した。
局長たちはゆうパックのラベルやゆうちょ銀行の払戻請求書、
104人は注意処分で済まされ、同社の懲戒規程(個人情報を故意に不正利用すれば減給か戒告、重大なら停職)に比べて軽いとの批判もあるが、彼らは事実を正直に打ち明けた104人でもある。
さらに驚くのは、ここからだ。
日本郵便が公表した調査結果資料は、カレンダー問題も含めてA4版7ページで、個人情報の流用・流出に関する記述は2ページ分しかない。アンケートの集計結果や「研修」といった対策を淡々と並べただけで、不正がなぜ起きたかの「原因」は1文字も書いていない。
不正の動機や原因を何も明らかにしない「不正調査」。これで済ませようという発想自体が、日本郵政グループの「ガバナンス意識の低さ」と「顧客軽視」の姿勢を象徴している。
本稿と前編で紹介した中国地方や近畿地方の指示や活動方針の文書は、日本郵便も存在を確認し、「不適切な指示」だったと認めている。ところが、不適切な指示をしたとみられる局長会幹部らへの調査をほとんどせずに、「顧客情報の流用を促す指示をした局長は一人もいなかった」と結論づけてしまった。「指示」は確認できても、「指示」をした局長は確認できないのだと、日本郵便の広報担当者もぬけぬけと主張しながら、調査の打ち切りを表明した。
こんな調査で誰が納得できるのだろうか。
「社内の常識が世間の非常識」に戻った日本郵政グループ
1月下旬にあった総務省の有識者会議では、個人情報保護法などの専門家から批判が噴出した。
巽智彦・東大大学院准教授は「調査を終えるのは論外。市民の納得が得られない」と批判した。森亮二弁護士は「国民利用者の信頼が損なわれている。発生原因が解明されないと、再発すると多くの人が考えるのでは」と指摘した。
それでも日本郵政の増田寛也社長は、2月の記者会見で「見解の違いだ」と外部識者の批判をはねつけた。「社内の常識が世間の非常識になっていないか」と呼びかけた就任当初の姿勢は、もう見る影もない。
政府の個人情報保護委員会も、総務省の顔色をうかがって「沈黙」を貫き、実態解明に後ろ向きな郵政の姿勢を黙認している。
国会では「再調査が必要」(日本維新の会の岩谷良平衆院議員)との声もくすぶるが、ごく一部にとどまる。局長会による多額で広範な政治献金に毒されてはいないだろうか[参照記事:年3億円にのぼる郵便局長らの政治団体収入 お金の行き先は:朝日新聞デジタル(asahi.com)]。
昨秋から停滞していた局長会の政治活動は、年明けから徐々に再開し、本格化している。参院選の足音が近づき、今では「ルールは守れ」「顧客情報は使うな」が合言葉のように言われている。
夏の選挙でどんな結果が現れるのか。筆者の取材はまだ続く。
※郵便局長会に関する情報は、筆者(fujitat2017[アットマーク]gmail.com)へお寄せください。