全国の郵便局長たちが、選挙で自分たちの利益代表の得票につなげようと、自社の顧客情報や経費を流用していた疑惑が、朝日新聞と西日本新聞の追及で明るみに出た。具体的な手口を朝日新聞の藤田知也記者が2回にわたって解説する。後編は顧客情報の流用について――。(後編/全2回)
インターホン
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3年に1度の参院選は郵便局長会の主戦場

前編から続く)

「後援会(支援者)名簿は、選挙においては『命』である」

こんな一文が記されていたのは、中国地方郵便局長会が2022年の参院選に向けた活動方針をまとめた文書「令和4年参議院選挙に向けた目標・取組」だ。

中国地方会は、任意団体である全国郵便局長会(全特)会長の末武晃氏が会長を兼ねる地方組織の一つ。全国で約1万9000人の局長のうち、約1700人が中国地方会に所属している。

文書は広島駅近くの会議室で2020年11月18日(水)午後1時半から、末武氏を含む中国地方会幹部約40人が集結した「拡大地方政治問題協議会」で取りまとめたものだ。

全特にとって、3年に1度ある参院選は政治の主戦場だ。中国地方会では当時、2022年の参院選で局長一人あたり「35票以上」の得票を目標としつつ、前回選挙で35票に届かなかった地区会には「40票以上」の目標を掲げるよう求めていた。

得票を伸ばすために必要だとうたわれるのが、目標とする得票数の2~3倍もの後援会会員の獲得だ。組織内候補を決めて後援会を立ち上げるまでの間は、後援会への勧誘対象となる「支援者」の拡大に力を注ぐ。

「カレンダーは絶対に窓口で持ち帰らせるな」

文書には、支援者の拡大に向けた重要施策として、こんな活動の徹底を求めていた。

・窓口来訪者の記録(社員の協力も願う)
・会員自らが窓口に出て、積極的に声掛け(雑談を含む)を行う
・局周活動の積極的展開

続けて経費で買っていたカレンダーについて、「郵便局長としてお客さま宅を訪問してお渡しできる施策」「信頼関係構築のための重要な取組で、ペア訪問での配布を徹底」「窓口カウンターで『自由にお持ち帰り』は絶対あってはならない」などと記載。カレンダーを持って訪問できる役得を活用し、顧客の信頼を得て後援会の活動につなげようという意図があったことは間違いない。