高齢客を「ゆるキャラ」扱いするかんぽ生命問題と似ている

中国地方会は、この文書を各地区会の役員らと共有。地区会の会長や政治担当理事らが、それぞれのやり方とニュアンスで現場へと指示内容を下ろしていた。支援者にできそうな顧客の個人情報を記録するため、わざわざノートを配っていた地区会もある。

前編で紹介した近畿地方会の事例も含め、郵便局長会が顧客を狙って支援者の獲得を図っていた例は枚挙にいとまがない。票に結びつきそうな顧客を郵便局で物色し、意識的に近づいて参院選の得票につなげるのが狙いだ。

実際、中国地方会のある局長は、熾烈しれつな支援者ノルマを満たすため、話がしやすい客を物色し、郵便局の物販購入履歴から個人情報を抜き出していたと明かしている[参照:「顧客データ流出、正直に答えなかった」 ある郵便局長の告白:朝日新聞デジタル(asahi.com)]。この構図は、口説きやすい高齢女性を「ゆるキャラ」と呼んで保険の押し売りをしていたかんぽ生命の不正問題とも似ている。

朝日新聞は昨年10月末から、この問題を取り上げてきた。西日本新聞が口火を切ったカレンダーの流用も大問題だが、その根底には郵便局の顧客をターゲットにした組織的な政治活動があり、そうした構造自体に根因があるというのが筆者の問題意識でもあった。

不正を正直に申告すると「処分が出るぞ」と脅迫

日本郵便は11月下旬、カレンダーの流用問題ばかりを調べ、顧客を標的にした政治活動については「顧客情報が使用された事実は認められない」として、ろくに調べずやり過ごそうとした[参照:「調査終了」が一転「継続検討」に 日本郵便カレンダー問題:朝日新聞デジタル(asahi.com)]。記者会見での追及を受け、渋々といった体で個人情報の問題を調べ直したのだが、これがまたずさん極まりない調査となる。

日本郵便が行ったのは、全国1万8633人の旧特定郵便局長を対象にした「実名アンケート」だ。第三者による調査は避け、積極的に情報提供を募ることもせず、局長本人の不正の自己申告だけを漫然と求めた。2018年度以降に絞って顧客情報の無断利用などがないかと尋ね、正直に申告すれば処分の軽減があり得るとした。ただし、処分が出るのは大前提で、先の中国地方会の局長も自身の不正を申告しなかったという。

しかも、社内のネットシステムで「はい」と答えると、すぐに調査担当者から電話がかかってきて「本当にいいのか?」「処分が出るぞ」と脅しのような確認をしていたため、申告を撤回した局長も数多い。