この中国の人権問題は実は、経済問題でもあるのだ。というのは、中国はチベットやウイグルの独立運動を力ずくで抑え込まなければならない「経済的事情」を抱えているのだ。

中国は、現在、世界最多の人口を抱え、世界で4番目に広い国土を持つ大国である。しかし、この大国は意外な弱みがある。

中国の地図で見てみてほしい。きっとおかしなことに気がつくはずだ。中国の上(北)の部分は、ほとんどが自治区になっている。自治区を除外した、中国本土の面積というのは、かなり狭い。

中国は、現在5つの省が自治区になっており、県レベルでも多くの自治区がある。

自治区全体の面積は、実に中国全土の65%を占めるのだ。

自治区が独立すれば国土の3分の2を失う

中国には56の民族があり(細かい区分けをすれば数千にもなる)、自治区は少数民族が住んでいる。中国の人口の約92%は漢民族であり、ほかの民族は約8%しかいない。つまり、8%の少数民族が中国の国土の65%を持っていることになるのだ。

たとえば、昨今、世界中から人権侵害があるとして非難されている新疆ウイグル自治区は、中国の面積の約6分の1を占めている。ウイグルでは90年代初頭から分離独立運動が起き、1997年には独立派のイスラム教徒と漢民族が衝突、死者10名以上を出した。現在も激しい独立運動が続いている。

中国は、これらの独立運動が激しい自治区には強力な弾圧を加えてきた。

もし一つでも自治区を独立させてしまったら、当然、ほかの自治区にも波及してしまうからだ。全部の自治区が独立すれば中国は、国土の3分の2を失ってしまうのだ。そうなれば、12億の漢民族を、今の3分の1の領土で養っていかなくてはならない。ただでさえ資源に不安を抱えている中国は大変なことになるのだ。

中国のウイグル、チベットなどの人権問題は、政治信条や宗教思想の問題ではなく、根底はそろばん勘定の問題なのである。

台湾問題は中国経済のアキレス腱

中国は国内の人権問題のほかに、台湾問題というものも抱えている。

台湾は、かつて共産党と国民党が争い、国民党が破れて逃げ込んだ地である。中国本土は共産党が掌握し「中華人民共和国」を建国したが、台湾は国民党政権が支配を続けた。そういう状態が70年以上続いているのだ。

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「台湾と中国は70年間も別々の政府だったのだから、もう分離でいいじゃないか」

世界ではそう思っている人も多いはずだ。しかし、中国はかたくなに台湾の領有を主張し続け、もし台湾が独立を強行するならば一戦も辞さないという態度をとり続けている。

この台湾問題も、チベット、ウイグル問題と同様の背景があるのだ。

中国が台湾を手放さないのは、もちろん国家としてのメンツもある。が、それ以上に経済的な事情が絡んでいるのだ。実は中国という国は、世界で第4位の広い国土を持つ国だが、排他的経済水域は驚くほど狭い。

中国の排他的経済水域は世界で10番目であり、229万平方メートルしかない。日本は世界で8番目であり、中国の2倍近くの排他的経済水域を持っている。

少しでも排他的経済水域を増やしたいワケ

排他的経済水域というのは、その国が海洋上の権利を持つ水域のことである。他の国は、船、航空機などの通過は許されるけれど、漁業や資源採掘などはできないということになっている。