つまりは、AIIBは、「中国が金を出し、その金を開発投資に使おう」という趣旨を持っている。他の国から見れば、中国の出した金を安く借りて開発に使える機会が生じるわけである。よほどのことがない限り損はない。だから、世界中の国がこぞって参加するわけである。

イギリスはいち早く参加を表明し、ドイツ、フランスなどの西欧諸国も次々に加盟した。アメリカと強いつながりを持つ韓国、オーストラリアも参加している。

2021年時点で100カ国以上が加盟しており、これは日本が主導して運営されているアジア開発銀行の参加国数を上回るものである。

日本とアメリカは、このAIIBへの参加を今のところ見送っている。

アジア地域においては、日本とアメリカが長く、インフラ投資支援などを行ってきた。AIIBと同じような趣旨を持つアジア開発銀行は、半世紀前の1966年に設立されている。出資比率は日本とアメリカが15.7%で筆頭である。日本が最大の発言権を持っており、日本主導の機関だといえる。

このアジア開発銀行は、アジアのインフラ投資にこれまで随分、貢献してきたという自負もあり、日本とアメリカは今更、中国が中心となるAIIBに、参加をしたくないということである。

インフラ投資を日米に主導されたくない

一方、中国としては、日本主導ではない、中国主導のアジア開発銀行をつくりたい、と考えたのだろう。

AIIBは、出資比率に応じて議決権があり、中国の議決権は26%程度である。AIIBの議決には75%以上の賛成が必要なので、中国が議決権26%を行使して反対すれば、その事案は通らないことになる。つまり、中国が拒否権を持っているのである。

この中国の拒否権に対して、日本のマスコミなどは「拒否反応」を示すことが多い。AIIBは中国の意のままである、と。

が、この方法は、実はIMFを真似たものなのである。

IMFは、議決をする際に85%以上の賛成が必要である。アメリカは加盟国の中で唯一15%以上の出資をしており、15%以上の議決権を持つ。そのため、アメリカが反対した事案は、絶対に通らない(つまりアメリカは拒否権を持つ)ということになっているのだ。

世界の国々にとって、日米のメンツなどはどうでもいいことのようで、AIIBの加盟国は急増している。

2016年8月には、カナダが参加を表明した。カナダは、アメリカともっとも親密な関係を持ってきた国である。「アメリカ人にとってもっとも信頼できる外国」という世論調査をした場合、だいたいカナダが1位か2位に選ばれる。

そのカナダが、アメリカと対立の構図にあるAIIBに加入したのである。

カナダ政府は、AIIBの参加について、アメリカ政府と連絡を取り合っていると述べており、アメリカ政府が反対していたわけではないようである。

もしかしたら、アメリカも電撃的に参加するかもしれない。そうなると、日本だけが取り残されることになる。

中国がウイグルやチベットを弾圧する経済的理由

このように、今後、世界でもっとも経済力を持つであろうと見られている中国だが、泣き所もある。しかもかなり深刻なものである。

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中国は現在、チベット自治区や新疆しんきょうウイグル自治区での人権侵害を行っているとして、先進諸国から厳しい非難をされている。