こうしたアジアの国々のなかには、国の経済全体における「外国人観光客による出費」への依存度が2割を超える国もあるほどで、一日も早い国境の開放は不可避の課題だった。外国人受け入れを軸とした旅行業の復活に対する国民のモチベーションが高いこうした国々での滞在は、欧州人たちもきっと気持ちよく過ごすことができるだろう。

裏を返せば、欧州の人々から見ると「東南アジアは開き始めたが、日本はまだ開かない」という形に映る。政府は6日、106カ国に対する入国拒否の解除を決めたが、依然としてビジネスや留学目的に限定されたまま。せっかく日本は世界的な大イベントを2つやり遂げたのに、今もなお訪日を希望する人々の期待をくじく政策を続けているのはいかにも惜しいと感じる。

筆者撮影
欧州内を飛ぶフライトはどの区間もほぼ満席で飛んでいる(4月4日LCCライアンエアー機内にて)

「日本は政治家がきちんと働いていないのでは?」

「どうして日本は開国しないのでしょうか。公衆衛生が優れた国だから、コロナ感染のコントロールもできているでしょう? なのに、外国人に対して入国を許さないのは、政治家がきちんと働いていないとか、そんな事情ですか?」

男性が日本についてあれこれ質問してくるのは、本人曰く「姪っ子が最近日本語を習い始めたからボクも関心を持つようになってねえ」とのことだが、そのわりに情報収集力には目を見張るものがある。

あえて男性の職業は聞かなかったが、スイスと英国を行き来している人の中には金融・証券関係の従事者がとても多い。小さなできことでも金融マーケットの数字に跳ね返ってくる可能性があるのだから、ニュースに対する理解や解釈はとても鋭い。

正直なところ、筆者は答えに窮した。あえて、日本で一般的に言われている意見を参考にこう答えてみた。「多くの日本人は、どうも外国人がくるとコロナが拡散すると思っていて、訪日客に来てほしくないようなんです。日本ではこの夏、大きな国政選挙があり、現政権はそうした人々の人気を取る作戦のようなんですよね」

しかし、英国人男性はなおもたたみかけてきた。

「この円安傾向では、相当な物価高になっているのではないですか。ウクライナがあんなことになっていて、石油価格がどんどん上がっているし……。欧州もロシアのガスを買う買わない、という問題があって物価高ですが、資源がもともとない日本はもっとたいへんでしょう?」