ラグビー村の村人でない人には疑問点だらけ

確かに19人いる男性理事よりも、私たち5人の女性理事のほうが話している時間は長かったでしょう。それはなぜかというと、質問をするからです。「これはどういう意味ですか?」「あの件、結局どうなったのですか?」。理事会で十分に説明されないこと、一般的な団体や企業の常識では考えられないこと、そういったことがあるたび、私たちはどんどん質問していきました。それが、外部から招聘しょうへいされた理事としての役目だと考えていたからです。

谷口真由美『おっさんの掟 「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」』(小学館新書)

大事なのは、審議事項を丁寧にこなしていくこと。パブリックな場所である理事会という場で、疑問点や質問すべきことが出てくれば、それは面倒でもひとつひとつ解消していくしかありません。

そもそも、私たち外部理事とラグビー協会内部の方とでは「情報量」がまるで違います。ふだんから顔を付き合わせている“ラグビー村”の人々の中では“常識”“決定事項”として共有されていることでも、月に1回の集まりにしか顔を出さない外部理事にとっては、理解できない内容が非常に多いのです。私たちは“村人”ではないから、わからないこと、受け入れられないことがあるのは当然です。だから発言するのは、女性理事の石井淳子さん、齋木尚子さん、稲沢裕子さん、私くらいということが多かったのです。

女性理事が欠席すると「理事会が静かだったよ」

男性理事が理事会を休んでもバレませんが、私たちが欠席するとすぐにバレてしまい、「なんで来なかったの? 理事会が静かだったよ」と言われることもしばしばでした。それくらい、質問者は女性に限られていた印象です。理事も幹部も企業などで華麗な経歴を持つ人たちばかりなのに、大切なところでは黙っている、やり過ごすという印象。これが日本の企業のスタンダードなのか、と思ったぐらいです。

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ラグビー協会では、いわゆる“シャンシャン総会”が当たり前とされ、意見や質問は“スムーズな進行に水を差すもの”という雰囲気で、ときにはあからさまに邪険に扱われました。ラグビー協会において必殺技は「時間切れ」という言葉。大切なことは考えさせないし、その余地を与えない。しかし私たち女性理事はその流れに抵抗しました。

森喜朗さんの発言は、きっとそのことを指しているのだと思います。すでに森喜朗さんの発言の問題点についてはさまざまなところで論じられてきていますので、本稿でこれ以上を語るつもりはありません。「しょうもないおっさんやな」──その一言に尽きると思います。