森さんは「女性が多い理事会」に出席したことがない

一方で、釈然としないことがありました。なぜ森喜朗さんが「ラグビー協会の女性理事」の話を持ち出したのか、ということです。『おっさんの掟 「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」』(小学館新書)の冒頭でご説明していますが、私を含む新任理事は、森喜朗さんが名誉会長を辞め、多くの高齢理事とともにラグビー協会を去ったのと入れ替わりに任命されました。つまり、森喜朗さんは「女性理事が5人いる理事会」に出席したことは一度もないのです。

ではなぜ森喜朗さんがそんな話をしたのか。それはつまり、森さんの前で「今のラグビー協会の理事会は女が意見ばかりして長くなっている」「わきまえていない女がいて、うるさくてかなわん」という主旨のことを話した協会幹部がいたということでしょう。それは、翌日2月4日の森喜朗さんの謝罪会見の発言からも明らかです。

「私は、昔は全体を統括する体協、いまのスポーツ協会の会長をしておりましたから、その団体のみなさんと親しくしております。そういうみなさんたちはいろいろ相談にも来られます。そのときに、やっぱりなかなか大変なんですということでした」

ラグビー協会幹部や男性理事の「本音」だった

ちょうどこの頃は、1月に出したラグビー新リーグの暫定順位について、協会内で「谷口批判」が吹き荒れていた時期ですから、誰かが森喜朗さんにそれを耳打ちしていたのではないでしょうか。

つまり、森さんの問題発言は、森さん本人の意見というより、多くのラグビー協会の男性理事や協会職員幹部たちの「本音」なのです。

森喜朗さんは、ラグビー協会の若返りを図り、女性登用を推し進めた人でもあります。ですからこれ以上、私はあの発言を蒸し返すつもりはありません。ただ、当時の私の頭の中に浮かんでいたのは「女性蔑視」への怒りではなく「いったい誰が告げ口したんや」ということでした。発言そのものより、そんな“ムラ社会”の根の深さが気になりました。

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