森喜朗氏の女性蔑視発言はどこに問題があったのか。「わきまえない女」の代表格とされた日本ラグビー協会元理事の谷口真由美氏は「会議で疑問点が出てくれば時間が長くなるのは当然だ。しかし、多くの協会幹部や男性理事たちは質問の多い女性理事に不満を持っていたのだろう」という――。

※本稿は、谷口真由美『おっさんの掟 「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」』(小学館新書)の一部を再編集したものです。

女性の権利
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ラグビー協会はいままでの倍、時間がかかる

2021年2月3日。「ラグビー界の最重鎮」が“事件”を起こしました。元首相で、2年前まで日本ラグビー協会の名誉会長だった森喜朗・東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長(当時)が、同評議会でこう発言したのです。

「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる。ラグビー協会はいままでの倍、時間がかかる。女性の優れているところですが、競争意識が強い。誰かひとりが手を挙げると、自分も言わないといけないと思うんでしょうね」
「女性を増やしていく場合は、『発言の時間をある程度、規制をしておかないと、なかなか終わらないので困る』と言っておられた。誰が言ったかは言わないけど」
「私どもの組織委にも女性は何人いますか。7人くらいおられるが、みんなわきまえておられる。お話もきちんと的を射ており、欠員があればすぐ女性を選ぼうとなる」

「女性の発言が多い」という部分は正しい

この発言が女性蔑視と大きく批判され、結果として森喜朗さんは大会組織委会長の職を辞することになりました。同時に「わきまえない女」という言葉がツイッターなどで拡散され、一躍トレンドワードとなりました。日本ラグビー協会の理事は24人中5人が女性で(※2020年度時点、私もそのうちのひとりです。「わきまえない女」の代表格と目され、私のところにもさまざまなメディアから取材依頼がありました。

森喜朗さんの発言は偏見に満ちており、公の場での発言としては許されるものではないと思います。もちろん、私たち女性理事が入ったことによって、ラグビー協会の会議の時間が倍になったという事実もありません。森さんの発言で正しいのは「女性の発言が多い」ということくらいでしょうか。